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7月6日の日本民話 2
シラサギになった藤
京都府の民話→ 京都府情報
むかしむかし、志賀郷(しがさと→綾部市)に、藤の宮というお宮さんがありました。
そのお宮に咲く藤の花は、ふつうの藤とは違って正月に白い美しい花を咲かせるのです。
この珍しい藤の花は全国に知れわたり、あちらこちらから、一目でも珍しい花を見ようと大勢の人々が集まりました。
そこで藤の宮の神主は、こう考えました。
「これほどの人が来るということは、正月に咲く藤の花とは、きっと珍しい花に違いない。ひとつ京におられる帝(みかど)にもお見せして、喜んでいただきたいものじゃ」
そこで神主は藤の花を正月に切り取って、京の帝に献上したのです。
すると、これを見た帝は大喜びしました。
「なんという見事な藤の花じゃ。それも正月に白い花を咲かせるとは、まことに素晴らしい」
それから正月になると、この藤の花を宮中に献上する事が習慣となりました。
ところが、ある年の事、毎年、きちんと藤の花を帝に届けていた男が病気になり、そのかわりの若者が藤の花を届けることになったのです。
「いいか、この箱の中には、帝にお渡しする大切な物が入っておるのじゃ。だから決して中身を見たりせずに、間違いなく京までお届けするんじゃぞ」
神主さんにこう言われて、若者は京へと出かけました。
ところが若者は、箱の中身が見たくてたまりません。
「一体、何が入っているのだろう? まあ、ちょっとのぞくだけならわかるまい」
もうすぐ京の町に着くというところで、若者は箱のふたを少し開けて、その中を見ようとしたのです。
すると突然、箱の中から一羽のシラサギが飛び出したではありませんか。
そのシラサギは、あっという間に大空へと舞い上がっていきました。
若者は、
「しまった!」
と、後悔しましたが、
「まあ、シラサギならきっと、自分で宮中まで飛んで行ってくれるだろう」
と、そのまま志賀郷(しがさと)に帰っていったのです。
そして神主には、
「ただいま。無事に、箱を届けて帰りました」
と、言ったのです。
ところが翌年から不思議な事に、正月になっても藤の宮の藤は一つも花を咲かせなくなってしまったのです。
おしまい
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