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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 7月の江戸小話 > やかん 
      7月6日の小話 
        
      やかん 
      
      
        むかし、ある浜辺に、やかんが打ち上げられていました。 
 これを見つけた男が、 
「何だこれは? ずいぶんと変わった形だが」 
と、やかんを持って考えていると、そこへ大勢の村人が集まって来ました。 
 やって来た村人たちも、これが何だかわかりません。 
「それは、何だ?」 
「いや、それがわからぬ」 
「おかしな物だな」 
「何に使うのだろう?」 
 みんなで考えていると、普段から物知りを自慢にしている男がやって来て言いました。 
「何だ、これだけ集まって、誰もそれを知らねえのか? それはな、かぶとだ」 
「そうか、かぶとか。しかしかぶとにしては、口がついているぞ。おかしいじゃないか」 
 誰かが文句を言うと、物知り男が言いました。 
「それくらいも分からんのか? 
 いいか、これをかぶると耳がふさがるだろう。 
 その時、この口を耳に持って行けば、音が聞こえるのさ」 
「なるほど。しかしそれなら、右と左の両方についていそうだが」 
「それはだな。何もない方は寝ころぶためだ。両方に口があったら寝にくいだろう」 
      ♪ちゃんちゃん 
(おしまい) 
        
         
         
        
 
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