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12月5日の日本民話 2
モックリコックリ
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むかしむかし、丹波高地の大きな山に、モックリコックリという名前の仙人が住んでいました。
そこへ、伝教大師(でんぎょうたいし)と言う修行僧がやってきて言いました。
「寺を建てて修業をしたいので、どうか山を貸していただきたい」
そこでモックリコックリは、こんな証文(しょうもん)に書いて大師に渡しました。
《十年間、貸しましょう》
それから十年後、修行をしている大師のところにモックリコックリがやって来て言いました。
「そろそろ約束の十年だ。山を返してほしい」
「えっ、もう十年がたちましたか。・・・わかりました、山を出る準備に明日まで待って下さい」
大師がそう言うと、モックリコックリは帰って行きました。
「約束は約束だが。さて、何かいい方法はないだろうか?」
まだ修行の途中なので、大師は山を返したくはありません。
そこで大師は、仲の良い亀に相談をしました。
すると亀は、大師にこう言いました。
「なに、簡単な事です。証文の十の字の上に、チョンと点を書けば良いではありませんか。そうすれば十が千になります」
「なるほど!」
翌朝、大師はモックリコックリのところへ出かけていって、十年を千年に手直しした証文を見せました。
それを見て、モックリコツクリはびっくりです。
「そんな馬鹿な! 証文には、確かに十年と書いたはずなのに」
「いいえ、千年ですよ。ちゃんとここに千年と書いてあるではありませんか」
「うむ、うむむ・・・」
モックリコックリは仕方なく山を出て行くと、越前の海に行って大きな魚になりました。
そして気に入った雄島(おじま)を自分のすみかにしようと、神通力(じんつうりき)で雄島のほとんどを海に沈めてしまったのです。
すると雄島に住む神さまが怒って、天から降ってきた一本のかぶら矢をモックリコックリに放ちました。
その一本の矢は途中で四十二本に分かれて、その中の二本がモックリコックリの両目を射抜いたのです。
両目を射貫かれたモックリコックリが死ぬと、モックリコックリの神通力で沈んでいた島は再び浮き上がりました。
今でも雄島につながる橋(→赤橋)が赤いのは、モックリコックリが流した血が由来していると言われています。
おしまい
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