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1月22日の世界の昔話
桃源郷
中国の昔話 → 中国の情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作 : 果実乃ゐと⁕Kamino Ito⁕
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投稿者 「眠りのねこカフェ」
むかしむかし、大きな川のそばに、小さな村がありました。
その村に、黄(おう)という漁師が住んでいました。
ある日の事、黄は、ふと思いました。
「この川の水は、どんな所から流れて来るのだろう? ・・・よし、見に行こう」
黄は仕事をやめて、川上の方へ舟をこいで行きました。
どこまでもどこまでも、こいで行くと、
川幅はだんだん狭くなっていきます。
川底もだんだん浅くなって、舟はとうとう進めなくなりました。
「仕方がない。ここから先は歩いていくか」
黄は木に舟をつなぐと、そのままどんどん歩いて行きました。
するとやがて、目の前に広い桃の木の林が広がりました。
花は満開で、桃の良い香りが一面に流れています。
「ほう。こんなところがあったのか」
黄がそのまま川縁を歩いて行くと、とうとう川の始まりのところに着きました。
その先は高い岩山で、岩の間から水がちょろちょろ流れています。
「ここが始まりの様だが、どうせなら岩山の向う側も見て見たいなあ」
さいわい小さな洞穴があったので、黄は体をかがめて奥へ奥へと入って行きました。
長い間進んだ黄は、やっと出た向う側を見てびっくり。
目の前には広い野原が広がっていて、畑も湖も森も、そして家もたくさんあります。
黄の姿を見つけた犬が、大きな声で吠えました。
その声で畑にいた人も家にいた人も、みんな黄の周りに集まりました。
そして一人の老人が、黄の前に進み出て言いました。
「わたしは、ここの村長です。
ここは桃源郷(とうげんきょう)と言って、普通の人の知らないところです。
よくここまで、来る事が出来ましたな。
さあ、お疲れでしょう。
わたしの家まで、おいでください」
黄は、村長のあとについて行きました。
村長は、色々なごちそうをしてくれました。
「ところで黄さん、この村の出来た訳を話しましょう。
むかし中国には、秦(しん)の始皇帝(しこうてい)と言う王さまがいた事は知っていますね。
わがままで、乱暴で、大勢の人を殺したひどい王さまだったそうです。
その時に殺されそうになった人たちが、こっそりここに逃げて来たのです。
そしてその人たちが、この村を作ったのです。
それが、わたしたちの先祖です。
ここには、けんかも争いもありません。
みんなが楽しく暮らしている、とても平和な村です。
ですから黄さん、あなたがここに来た事は、絶対に誰にも言わないでください。
約束してください。
お願いです」
「はい。絶対に、誰にも言いません」
黄は村長に、固い約束をして帰りました。
さて、自分の村に帰った黄ですが、あれ以来、あの美しい平和な村が忘れられません。
そこで友だちと酒を飲みながら、つい、しゃべってしまったのです。
するとその友だちが、また友だちにしゃべったのです。
こうして桃源郷のうわさは、役人にまで知られてしまいました。
「黄、お前は桃源郷という所に行ったそうだな。おれを、そこに案内しろ!」
仕方なく黄は、役人を舟に乗せて川をのぼって行きました。
そして、あの美しい桃の林も通りました。
ところがどうした事か、どこまで行っても、あの時の岩山も洞穴も見つからないのです。
「おかしいな。道に迷うはずはないのだが」
それからも黄と役人は何度か桃源郷を目指しましたが、桃源郷を見つける事は出来なかったそうです。
おしまい
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