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2月12日の世界の昔話
若返るのをあきらめたお母さん
ハワイの昔話 → アメリカの情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「にっぽんいち一生懸命な昔ばなし」 にっぽんいち一生懸命な昔ばなし
ハワイの言い伝えでは、人間は年を取るとヘビやトカゲの様にすっぽりと古い皮を脱いで、若返る事が出来たそうです。
ある日の事、一人のお母さんが、自分の顔を鏡で見てがっかりしました。
「まあ、わたしったらいつの間にか、すっかりしわだらけだわ。前に若返ったのはずいぶんと前だから、もうそろそろ古い皮を脱いで若返らないと」
お母さんは子どもたちが寝ているすきに、そっと川へ出かけました。
そしてきれいな川に入って、服を脱ぐように全身の皮をすっぽりと脱ぎすてたのです。
こうしてお母さんは、すっかり若返ってきれいな女の人になりました。
お母さんの脱ぎ捨てた古い皮は川のくいに引っかかって、ゆらゆらと水に浮いています。
「ああ、さっぱりした。お肌もつるつる! 若返るって、本当に素晴らしい事だわ」
きれいになったお母さんは、歌を口ずさみながら子どもたちのいる家へ帰りました。
「ただいま。ほらお母さん、とてもきれいになったでしょう」
ところが子どもたちは、若返ったお母さんを見てびっくりです。
「あれ? 知らない人が来たよ」
「どこのお姉ちゃんだろう?」
それを聞いたお母さんは、あわてて言いました。
「何を言っているの? 若返ったけど、お前たちのお母さんだよ」
けれど子どもたちは、首をふってさけびました。
「ちがうよ! お母さんはもっと年を取っていて、しわがいっぱいあるんだ」
「そうだよ。そんなにつるつるの肌のお姉ちゃんじゃない!」
それを聞いていた末っ子が、泣き出しました。
「うぇぇ〜ん、うぇぇ〜ん。お母さんが、お母さんがいないよう。お母さんがぼくたちをすてて、どこかへ行っちゃったよ」
「だから、わたしがお母さんだよ。お前たちを産んでからは始めてだけど、お母さんは古い皮を脱いで若返ってきたんだってば」
でも子どもたちは、信じようとはしません。
すっかり困ってしまったお母さんは、家を飛び出すとさっきの川へ引き返しました。
「ええーと、わたしの古い皮、古い皮はどこだろう?」
探してみると、古い皮はまだくいに引っかかったままでした。
「あったわ。一度脱いだ皮を再び着ると、もう二度と皮を脱ぐ事は出来ない。・・・でも、あの子たちに嫌われるよりましだわ」
お母さんは川の中に入ると、古い皮をひろってすっぽりと着込みました。
「さあ、これで子どもたちも、安心するでしょう」
元の姿に戻ったお母さんが家に帰ると、子どもたちがうれしそうにかけ寄って来ました。
「お帰りなさい、お母さん」
「お母さん、今までどこへ行っていたの?」
「そうだよ。さっき変なお姉ちゃんがやって来て、自分の事をお母さんだなんて言うんだよ」
「そうなの。でも、安心しておくれ。お母さんは二度とどこへも行かないし、そのお姉ちゃんも二度と来ないからね」
おしまい
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