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5月13日の世界の昔話
死神の名付け親
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むかしむかし、まずしい男に子どもが生まれた。
男は道で出会った者に、子どもの名付け親になってもらおうと考えました。
まず会ったのは、お尻に尻尾の生えた悪魔(あくま)です。
しかし男は、悪魔は人をだますからいやだと断りました。
次に会ったのは、骨だけの死神です。
死神は金持ちでも貧乏でも、公平に死をあたえる神です。
そこで男は、死神に名付け親を頼みました。
頼まれた死神は、名付けた子どもを裕福(ゆうふく)にしてやると約束しました。
そしてその子が大きくなると、あの時の死神が現われたのです。
死神はその子を森に連れて行き、ある薬草を指さしました。
「お前に、プレゼントをしてやろう。
医者に、なるんだ。
お前が病人をみる時には、必ずわたしがいてやろう。
わたしが病人の頭の方にいたら、この薬草で治せるだろう。
しかし足の方にいたら、助からないからな」
しばらくすると、その若い男は名医といわれるようになりました。
そんなある日、王さまが病気になったのです。
さっそく呼ばれて男が行くと、死神は王さまの足の方に立っていました。
このままでは、王さまは死んでしまいます。
男は何か死神をだます方法はないかと考え、ある方法を思いつきました。
「王さまをベッドごと持ち上げて、頭と足を逆にしてください」
こうしておいて、あの薬草を飲ませると、王さまの病気はたちどころに治ってしまいました。
その日の夜、死神は男の所にやって来て、
「今度あんな事をしたら、ただではすまない。二度とするなよ」
と、言いました。
しばらくすると今度は、お姫さまが病気になりました。
悲しんだ王さまは、姫の病気を治した者に姫を嫁にやると言ったのです。
そこでまた男が、お城にやって来ました。
見ると、死神はまた足の方にいます。
死神の言葉を忘れたわけではありませんが、男はお姫さまの美しさに目がくらんで、王さまを治したのと同じ方法でお姫さまの病気を治したのです。
その日の夜、死神は男をひっつかむと、ある洞窟(どうくつ)の中へ引っぱって行きました。
そこには、たくさんのローソクが並んでいます。
「どうだ、きれいだろう。
これが、生命(せいめい)のローソクだ。
この太くて長いのは、元気な若者の物。
この小さいのは、年寄りの物だ」
男は自分のを、見せてくれるように頼みました。
するとそれは、今にも消えそうな小さいローソクだったのです。
「本当は、お前のローソクはまだまだ太くて長い物だったのだが、王と姫を助けてやったために、こんなに小さくなってしまったのだ」
「お願いです!
もう、あんな事はしません。
どうか大きなローソクを、つぎたしてください」
男が泣いて頼むので、死神は大きなローソクを持って来ました。
そして火をうつすようなふりをして、小さな男のローソクを消してしまったのです。
そのとたん、男は死んでしまいました。
おしまい
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