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7月23日の世界の昔話
ガチョウ番の少女
グリム童話 → グリム童話の詳細
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
※ 朗読は「小学生童話 6年生用で、本作とは多少異なります。
むかしむかし、あるところに、年おいたおきさきとお姫さまが住んでいました。
お姫さまが、ある国へお嫁に行く日がやってきました。
おきさきはたくさんの嫁入り道具を持たせると、お姫さまの侍女(じじょ)もウマに乗せて送り出しました。
その時おきさきは、自分の血を三滴(てき)たらした白い布をお姫さまに渡し、
「きっと、何かの役に立つでしょう」
と、言いました。
移動の途中、お姫さまはのどがかわいて侍女に頼みました。
「あの、のどがかわいたので、川の水をくんできてくれませんか?」
すると侍女は、
「ふん! えらそうに。自分でくんできなさいよ!」
と、言って、お姫さまの言うことを聞いてくれません。
お姫さまがなげいていると、おきさきにもらった三滴の血が言いました。
「これをおきさきさまが知ったら、心臓がはれつなさいますよ。さあ、もう一度侍女に命令するのです」
「でも・・・」
おとなしいお姫さまは、何も言えませんでした。
しばらくすると、侍女がお姫さまに言いました。
「あんた、あたしとウマを取り替えなさい! いいウマに乗るのは、あたしよ。それから服も、取り替えるのよ!」
「でも・・・」
「はやくしなさい!」
お姫さまは仕方なくウマと服を取り替えると、侍女のウマに乗ったままで結婚相手の王子の待つ城へと到着しました。
お姫さまのウマに乗った侍女は、王さまの前に進み出ると言いました。
「こんにちは、王さま。わたしが、王子さまの結婚相手の姫です。そしてあれは、わたしの侍女です。役立たずですが、こき使ってやってください」
侍女の言葉に、お姫さまはビックリ。
「あ、あの。わたしは・・・」
お姫さまが本当の事を言おうとすると、お姫さまに化けた侍女が怖い顔でにらみました。
「はやく下がりなさい! クズクズすると、ムチを打つわよ!」
「・・・・・・」
こうしてこの日から、お姫さまはガチョウの世話をするガチョウ番になってしまったのです。
さて、お姫さまに化けた侍女はすっかりお姫さま気取りで、結婚相手の王子に頼みました。
「わたしの連れて来たウマを、殺してくださいな」
侍女は自分の秘密を知っているウマが、いつ本当の事を告げてしまうかと心配でならなかったのです。
こうして、お姫さまのウマは殺されました。
ガチョウ番になったお姫さまは、この話を聞くと大変悲しみ、ウマの皮をはぐ職人に頼んで馬の首をもらうと門の壁にかざりました。
それからガチョウ番のお姫さまは、ガチョウの世話をするたびに、そのウマの首に話しかけたのです。
その事を知ったまわりの人たちは、気持ち悪がってこの話を王さまに報告しました。
「そのガチョウ番ときたら、ウマの首と会話してるのです。しかもウマの首も、それに返事をするのですよ」
「そうか。もしかするとそのガチョウ番は、魔女(まじょ)かもしれない。よし、確かめてみよう」
王さまはこっそりガチョウ番のお姫さまのとろこへ行くと、隠れながら娘とウマの会話を聞きました。
(何と、あの姫は実はにせ者で、この娘が本当の姫だったのか)
真実を知った王さまはガチョウ番の娘をよぶと、彼女に王女の衣装(いしょう)を着せてみました。
すると、あの侍女とは比べ物にならないほどの美しさです。
王さまは王子をよんで、こっちが本物のお姫さまだと告げました。
「やはりそうでしたか。今すぐにせ者を捕まえて、死刑にしましょう」
さっそく剣をぬく王子に、王さまが言いました。
「待て。自分がした罰は、自分に決めさせるとしよう」
その日の夜、王子はにせ者のお姫さまにたずねました。
「実は、自分の主人をだまして、その主人の相手と結婚しようとする女がいるのだが、姫はその女を、どうするべきだと思う?」
まさか自分の事とは思っていないにせ者のお姫さまは、
「そんなとんでもない女は、すぐに死刑にするべきでしょう」
と、答えたのです。
「そうか、ではそうしよう」
にせ者のお姫さまは、すぐに死刑になりました。
そして本物のお姫さまは王子さまと結婚して、いつまでも幸せに暮らしたのです。
おしまい
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