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8月5日の世界の昔話
トルント山のトロール
アイスランドの昔話 → アイスランドの情報
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「Dr シロネコ」
むかしむかし、二人の男が薬草を取るために、トルント山と呼ばれる山へ行きました。
このトルント山には魔法使いの大女がいると言われていますが、薬草はこの山にしか生えていないのです。
「おおっ、薬草がこんなにあるぞ」
「こっちに来てみろ、一面薬草だらけだ」
二人が夢中になって薬草をつんでいるうちに、すっかり日が暮れてしまいました。
「仕方ない。今夜はテントで寝るとしよう」
二人はテントに入ると、横になりました。
さて、真夜中の事です。
「ううー、寒いな」
一人の男が寒さに目を覚ますと、隣に寝ていたもう一人の男が外に出ようとしているではありませんか。
男の目はうつろで、まるで何かに操られているようです。
心配になった男は、出て行った男のあとを追いました。
先を行く男は、そのまま氷河へと向かいます。
見ると氷河には大女の魔法使いが座っていて、なにやら呪文を唱えて男に魔法をかけました。
すると魔法をかけられた男は見る見る小さくなって、そのまま大女の胸に吸い込まれてしまったのです。
「何て事だ。このままここにいては危険だ」
あとをつけて行った男は、あわてて村へ逃げ帰りました。
さて、それから一年後、村人たちがあのトルント山に薬草を取りに行くと、何と大女の胸に吸い込まれてしまったあの男が、みんなの前に姿を現したではありませんか。
「・・・・・・」
男はとても怖い顔つきになっていて、誰も声をかけることは出来ませんでした。
二年後、村人たちが再び薬草を取りに行くと、またあの男が現れました。
男の目はタマゴのように大きく、鼻はするどくとがり、まるで魔物の様な顔つきになっていました。
三年後、村人たちが再び薬草を取りに行くと、またあの男が現れました。
目は前よりも大きく血の様にまっ赤で、背中からはコウモリの羽が生えていました。
もう人間ではなく、本物の魔物です。
村人たちはこわくて、その場から逃げることも出来ません。
すると、あの時に一緒にいた男が、魔物になった男に恐る恐る尋ねました。
「あんたは、何者だ? あんたは今でも、神さまを信じているのか?」
すると魔物になった男は、ニヤリと笑って言いました。
「わしは、トルント山のトロールだ。わしは、魔女さまを信じている」
そして魔物になった男は背中の羽を羽ばたかせると、そのまま暗闇の中に消えてしまいました。
おしまい
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