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 8月24日の世界の昔話
 
  イラスト 龍之進  三絶堂
 
 最高の宝物
 龍之進のオリジナル童話
 
        
          | ♪音声配信(html5) |  
          |  |  
          | 音声 : ことば工房    男:畠山昭彦 /青年・他:ことば工房 |  アニメサイズ
        Max 2880×2160 
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
 投稿者 「長島真祐」  YouTube アドレス
 
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 制作: ユメの本棚
 
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 投稿者 「眠りのねこカフェ」
  昔々あるところに、宝物を集めるのが大好きな男がいました。男は世界中を旅してまわり、キラキラ光る宝石や、金でできた像や、美しい布などを集めていたのです。
 
 ある日、旅の途中で日が暮れてしまったので、
 
  男は近くにあった村の小さな家に泊めてもらうことになりました。「何もありませんが、どうぞゆっくりしていって下さい」
 
   その家に住んでいた青年は、粗末な皿に入れたスープを男に差し出しました。男は愛想笑いをしながら、心の中で呟きました。
 「本当に何もないところだな。家はボロボロだし、この皿だって、まるでガラクタじゃないか」
 
   男はスープを飲みながら、自分が集めた数々の宝物のことを、青年に自慢し始めました。 青年は黙って聞いていましたが、やがてこんなことを言いました。 
  「この村にも、素敵な宝物がありますよ」「何だって。本当かい?」
 「ええ、本当です」
 「ようし、それなら、その宝物とやらを見せてもらおうじゃないか」
 「分かりました。では、明日の夕方まで待って下さい」
 どうして明日の夕方まで待たなければならないのか、男は不思議に思いましたが、とにかく青年の言うとおりにすることにしました。
 
 次の日の夕方、青年は男を村のはずれに連れていきました。
 
   そこには家もほとんどなく、空が広々と感じられます。青年は、遠くに見える山の方を指さしました。
 「ほら、見て下さい」
 青年の指さす方角を見た男は、思わず息を飲みました。
 
   どこまでも広がる空は、赤色や橙色や黄色や様々な色で見事に染められ、紫色や桜色の雲がたなびいていました。そしてその中に、黒々とした山の姿が浮かび上がって見えました。
 男はしばらく、何か言うのも忘れて、その景色を見つめていました。
 
   やがて男の目から、一筋の涙が流れ落ちました。「どうでしたか。きれいだったでしょう」
 家に戻る道すがら、青年はにっこり笑って男に話しかけました。
 
   男は、何も言わずにうなずきました。夕焼けが、あんなにいろいろな色をしていたなんて。
 桜色の雲が、あるなんて。
 山があんなに、厳かな姿を見せるなんて…。
 「素敵な宝物でしょう?」
 青年は、再び男に話しかけました。
 男は、青年の方を向き、こう答えました。
 「ああ。最高の宝物だよ」
 おしまい  このお話しとイラストは、自作のイラスト・フリー素材を公開している三絶堂の運営者「龍之進」さんのオリジナル作品です。
 龍之進さんの運営サイト「三絶堂」
   
 
 
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