9月28日の世界の昔話
アンデルセン童話 → アンデルセンについて むかしむかし、天使が白い羽を広げながら、これから神さまの所へ行く女の子に話して聞かせました。 「いいですか。 そして、その子が一番好きだった所へ連れて行って、一緒に花を集めるのです。 そう言って天使は、女の子と一緒に女の子が一番好きだった故郷の花園へ飛んで行きました。 「さあ、どの花を持って行くのですか?」 天使が見てみると一本の枝が折れていて、開きかけたつぼみが干からびていたのです。 「かわいそうに。では、神さまのところで花が開きますように」 天使は、にっこりしてその花を取りました。 それから二人は、きれいな花をたくさんつみました。
その暗い道ばたには、がらくたが山の様に積んであります。 天使はそのがらくたにある植木ばちのかけらに入った、干からびた野の花を指差しました。 「あれも、持って行きましょうね。そのわけは、飛びながら話してあげますよ」 「さっきの町のせまい地下室には、病気の子がいました。 その子の遊びといったら、お日さまが三十分ぐらい差し込む窓から、光に手をかざして見るぐらいのものでした。 その子が始めて春の森を知ったのは、となりの子が持ってきてくれた緑の枝を見た時です。 その枝を頭の上に持っていくと、 小鳥がいっぱいさえずっている森の中にいるような気がしたのです」 女の子は、天使の顔をのぞきこみました。 天使は女の子に、やさしくほほえみました。 「それから、となりの子は野の花を持ってきてくれました。 その花には根がついていたので、病気の子は植木ばちに植えて大切に世話をしました。 だって、花はその子のためだけにきれいに咲いて、いい香りをふりまいていたんですもの」 天使は、大きく羽ばたきました。 「でも、やがて病気の子は、花を見ながら死んでしまいました。 だからこの花は、どんなに立派な庭の花よりも、ずっと素敵なのですよ」 話を聞いた女の子は、天使にたずねました。 「それはね。わたしが、その病気の子どもだったのですよ」 ちょうどその時、二人は神さまの国につきました。 神さまは干からびた野の花にキスをして、声を与えてくれました。 それから神さまは、やさしく女の子を胸に抱いて言いました。 「良く来たね。これからは、君が死んだ子どもたちをここへ連れて来るのだよ」 「えっ? わたしが?」 気がつくと、神さまに抱かれた女の子の背中には、小さなまっ白い羽が生えていました。 女の子は、天使になったのです。 おしまい |
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