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12月20日の世界の昔話
老人と三人の若者
ロシアの昔話(クルイロフ童話) → ロシアの国情報
むかし、一人のおじいさんが、杉の苗木を植えていました。
「早く、立派な木になれよ」
木に語りかけるおじいさんを見て、三人の若者が笑いました。
「はん。もうすぐこの世からおさらばする年になって、そんな事をしたって無駄さ。木が大きくなる前に、あんたの方がくたばっちまうさ」
「そうさ。それともあんたは、あと百年も二百年も生きるつもりかい?」
「そうやって木を植えるより、自分の墓をほった方が利口だぜ」
それを聞いたおじいさんは若者に腹を立てるどころか、静かなほほえみを浮かべて言いました。
「なあに、わしは子どもの頃から、働く事にはなれておる。
いくつになっても、働く事は楽しいもんじゃ。
それに人間というものは、自分の為にだけ働くのではないよ。
そりゃ、この苗木が大木になるまで、わしは生きておらんじゃろう。
じゃが、やがてこの木の下で孫たちが遊ぶようになると思うと、それだけでもわしは幸せなんじゃ」
おじいさんは苗木を植え続けながら、さらに話を続けました。
「あんたたちは若い、これから何でも出来るだろう。
だがな、死というものは、そんな事には気をつかってくれん。
わしはこの年までに、若くてきれいな娘さんや、たくましい青年を何人墓場に見送った事か。
生きている者は、年の順番に死んでいくのではない。
誰が先に死んで、誰が長い生きするかは、誰にもわからんのじゃ。
だからこそ、若者も年寄りも今を精一杯生きなければならん。
働ける間は、働かねばならん。
それが一番大事な事だと、わしは思うよ」
この老人の言った若者が老人よりも先に死ぬ事もあるといった言葉は、それから少しして本当になりました。
三人の若者のうち一人は船で商売に出かけましたが、途中でひどい嵐に会って船もろとも海に沈んでしまったのです。
もう一人の若者は外国へ行き仕事に成功して贅沢な暮らしをしましたが、そのために体を悪くして死んでしまったのです。
そして三人目の若者は夏の暑い日に冷たい物を飲みすぎて病気になり、さらに腕の悪い医者の治療によって助かる命をなくしたのです。
彼らの死を知ったおじいさんは、
「かわいそうに。せめてお前たちの分も、木を植えてやろうな」
と、目にいっぱいの涙を浮かべながら、新しい三本の苗木を植えました。
どんなに若くて元気でも、人間はいつ死ぬかわかりません。
若いからと言ってだらしない生活をせずに、毎日を精一杯生きてください。
おしまい
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