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6月19日の小話
ネコのまねしたお嫁さん
むかし、ある山の村に、せけんのことをよくしらないむすめがいました。
あるとき、このむすめのところに、となりの村からつかいがきて、
「ぜひ、お嫁にもらいたい」とのこと。
むすめのおっかさんは、
「こんなけっこうなはなしは、またとあるもんでない」
と、さっそく、むすめをよんで、言い聞かせました。
「いいかい。お嫁にいって、しばらくの間は、もらってきたばかりのネコみたいに、おとなしくしているんだよ」
「うん、わかった。ネコみたいにしておれば、いいんだな」
むすめが台所をながめると、よそからもらってまもない三毛ネコが、かまどのかまのふたの上で、こっくりこっくりと、ねていました。
さて、むすめはまもなく、お嫁入りをすませて、おむこさんの家でくらすようになりました。
嫁入りの次の朝のことです。
むすめは、だれよりもはやくおきて、かまどに火をつけ、ごはんたきをはじめました。
そのうちに、
「そうだ。ネコみたいにしておらねば」
と、かまのふたの上にあがって、おすわりしました。
そこに、おしゅうとめさん(おむこさんのおかあさん)が、
「もっとゆっくり、ねてりゃあいいに」
ねぼけまなこで、やってきました。
みると、嫁さんが、かまのふたの上にすわっています。
「あら! そんなところにあがって、なにをしているんだい?」
おしゅうとめさんがびっくりしてきくと、むすめは、手で顔をなでまわしながら、
「ニャゴ、ニャゴ、ニャァーン」
と、かわいらしく返事をしたのですが、きみが悪いと、その日のうちにおいかえされてしまいました。
おしまい