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6月18日の日本民話
貧乏長者
山形県の民話
むかしむかし、あるところに、一人の貧乏(びんぼう)な漁師(りょうし)のおじいさんが住んでいました。
おじいさんには子どもが大勢いたので、働いても働いても貧乏でした。
村にはまた、大金持ちの長者(ちょうじゃ)がいて、ある日、長者がおじいさんをよんで、
「わしも、じいさまの幸せにあやかりたいもんだ」
と、おじいさんにごちそうをしたのです。
おじいさんは、首をかしげて
「わしなんかよりも、長者さまこそ、金持ちで幸せではありませんか?」
と、いうと長者は、
「いやいや、じいさまこそ村一番のしあわせもんだ。人間にとって一番目の宝である健康と、二番目の宝である子宝(こだから→子ども)が大勢いるんだからな。・・・じゃが、わしなぞは三番目の宝である、お金しかないじゃ。やっぱり村一番の宝持ちは、じいさまだよ」
「なるほど、そいつはうれしいな」
おじいさんは大喜びで家に帰ると、おばあさんにその事を話しました。
そして、おじいさんとおばあさんはさっそく、一番目の宝と二番目の宝のお礼をするために、お宮参り(おみやまいり)に出かけました。
さて次の日の事、海に出かけたおじいさんの舟は大漁でした。
おまけに海辺でひろったたき木をわったら、なんと中から大判小判がざくざくと出てきたではありませんか。
ですが、おじいさんとおばあとんは、
「わしらは、一番目の宝と二番目の宝のある幸せ者じゃ。この上、三番目の宝まで手に入れたら、バチが当たってしまうわい」
と、とれた魚を村人たちにごちそうして、おみやげに、大判小判を一人一人に手渡したのです。
それからおじいさんとおばあさんは、貧乏長者と呼ばれるようになったという事です。
おしまい