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7月17日の日本民話
お化けじぞう
愛媛県の民話
むかしむかし、あるところに、こんぴら橋という橋があって、そのたもとにおじぞうさんがたっていました。
このおじぞうさんは、昼間は普通のおじぞうさんですが、夜になると、『のびあがり』というバケモノになって、ムクムクと背が伸びて、首が伸びて、ビロローンと長い舌を出すのです。
ですから村の人たちは怖がって、だれもこの橋を通ろうとしません。
ある村の人がこの話を聞いて、友だちの又平(またべえ)という男にいいました。
「おじぞうさんの前に、赤いくいを打ち込んできたら金をやるぞ」
「本当か? よしよし、そのくらいわけもない」
又平はさっそく、赤いくいとつち(→物をうつ道具)を持って出かけましたが、だんだん怖くなって、ガタガタブルブルとふるえています。
それでもなんとかおじぞうさんの前まで行くと、目をつぶってくいを打ち込みました。
「さあ、終わったぞ。はやく帰るとしよう。なんだかおじぞうさんが、今にも『のびあがり』に化けそうじゃ」
又平はクルリと向きを変えると、あわてて逃げようとしました。
ところがおじぞうさんが又平の着物を引っぱって、放してくれないのです。
「うひゃー、助けてくれー!」
又平は、ありったけの声でさけびました。
それを聞きつけ人々が、ちょうちんを手にかけつけました。
「どうした? なにがあったんじゃ?」
「こ、このおじぞうさんが、この『のびあがり』が、わしの着物をつかんで放してくれんのじゃ!」
「なんだって!」
かけつけた人々はビックリしましたが、又平の着物を引っぱっているものを見て大笑い。
なんと又平は、自分の着物のすそに赤いくいをうちこんで、もがいていたのです。
おしまい