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8月23日の日本民話

にぎりめしをとられたさむらい

にぎりめしをとられたさむらい
岩手県の民話

 むかしむかし、ある山にずるがしこいキツネが住んでいて、通る人をだましては荷物をとっていました。
(こまったキツネだ)
と、思っても、キツネがこわくて、だれ一人キツネをやっつけるものはおりません。
 ところが、それを聞いた一人のさむらいが、
「キツネのくせに人の荷物をとるなんて、とんでもないやつだ。ここは一つ、わしが退治(たいじ)してくれよう」
と、言って、にぎりめしの弁当を背負い、キツネのいる山道へと出かけていきました。
 さむらいは山道のとちゅうで立ちどまり、に手をかけたまま、キツネの現れるのをジッと待っていました。
 ところがいつまで待っても、キツネが現れません。
(わしがくると知って、出てこないんだな)
 さむらいはしかたなく近くにあった石の上にこしをおろし、弁当のつつみを開いてにぎりめしを食べはじめました。
 その時、山道の下の方で何やら人のさけぶ声がしました。
(さては、キツネが現れたか)
 さむらいはにぎりめしをおいて、立ちあがりました。
 すると山の下のほうから一頭のウマがかけだしてきて、後ろから二、三人のお百姓(ひゃくしょう)さんが追いかけてきます。
(なんだ、ウマが逃げだしたのか。よし、わしがつかまえてやろう)
 さむらいは道のとちゅうに立って、ウマを待ちかまえました。
 ところがそのウマは、さむらいめがけて頭からつっこんできます。
「あぶない!」
 さすがのさむらいも、あわてて草むらへ飛込みました。
 そのとたん、ウマがにぎりめしを口にくわえたまま走っていったのです。
「しまった!」
 さむらいがあわててはねおきると、ウマの姿はだんだん小さくなり、いつのまにかにぎりめしをくわえたキツネの姿になって逃げていきました。
 ふりかえってみると、ウマを追っかけてきたお百姓さんもいません。
「やられた! キツネにやられるとは、なんたる不覚(ふかく)」
 この事が知られるとはずかしいので、さむらいはこそこそ逃げるようにして、山をおりていきました。

おしまい

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