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6月2日の世界の昔話
ギアッコ少年とマメ
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むかしむかし、ギアッコという、ひとりぼっちの男の子がいました。
ギアッコはひとにぎりのマメを持っていて、まいにちひとつぶずつ食べました。
でもとうとう、あとひとつで、みんななくなってしまうときがやってきたのです。
ギアッコは、たったひとつのこったマメをポケットにしまって、テクテクと歩いていきました。
日がくれるころ、ギアッコはクワの木の下にある、小さな家にたどり着きました。
トン、トン、トン。
ギアッコが戸をたたくと、腰のまがったおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。このマメが、ひとつしかないんです」
と、ギアッコはいいました。
「おお、それはかわいそうに。では、これをお食べ」
腰のまがったおじいさんは、クワの実を四つくれて、ギアッコをだんろのそばにねかせました。
夜中になりました。
コロコロコロ。
ギアッコのポケットから、マメがころがりおちました。
パクリ。
ネコが、そのマメをたベました。
ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのネコが、ぼくのマメを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのネコを持っていっておくれ。わしはドロボウネコはきらいだからね」
ギアッコはネコをかかえて、スタスタと歩いていきました。
日がくれるころ、ギアッコはクルミの木の下にある、小さな家につきました。
トン、トン、トン。
ギアッコが戸をたたくと、しらがのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコしか持っていないんです」
と、ギアッコがいいました。
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
しらがのおじいさんは、クルミの実を三つくれて、ギアッコとネコをイヌ小屋にねかせました。
夜中になりました。
ムシャ、ムシャ、ムシャ。
イヌがネコを食べてしまいました。
ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのイヌが、ぼくのネコを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのイヌを持っていっておくれ。わしは、よくばりイヌはきらいだからな」
ギアッコはイヌをつれて、ズンズンと歩いていきました。
日がくれるころ、ギアッコはイチジクの木の下にある、小さな家につきました。
トン、トン、トン。
ギアッコが戸をたたくと、しわだらけのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌしか持っていないんです」
と、ギアッコがいいました。
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
しわだらけのおじいさんは、イチジクを二つくれて、ギアッコとイヌをブタ小屋にねかせました。
夜中になりました。
ゴクリッ。
ブタが、イヌを飲みこみました。
ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのブタが、ぼくのイヌを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのブタを持っていっておくれ。わしは、そんな食いしん坊のブタは大きらいだ」
ギアッコはブタをつれて、ドンドンと歩いていきました。
そして日がくれるころ、ギアッコはクリの木の下にある、小さな家につきました。
トン、トン、トン。
ギアッコが戸をたたくと、ヨボヨボのおじいさんが出てきました。
「なんの用だね?」
「あの、ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタしか持っていないんです」
「おお、かわいそうに。では、これをお食べ」
ヨボヨボのおじいさんは、クリをひとつくれて、ギアッコとブタをウマ小屋にねかせました。
夜中になりました。
ガッ、ガッ、ガッ。
ウマが、ブタをたべました。
ギアッコは、目をさまして、
「ねえねえ、おじいさん。おじいさんのウマが、ぼくのブタを食べちゃったよ」
と、泣き出しました。
「おや、それはわるかった。では、そのウマをつれていっておくれ。わしは、ろくでなしのウマなんか大きらいだ」
ギアッコはウマにまたがって、パカパカすすみました。
日がくれるころ、ギアッコはお城につきました。
ドン、ドン、ドン。
ギアッコが門をたたくと、お城の中から、
「だれだっ!」
と、声がしました。
「あの、ギアッコです。ぼく、お父さんもお母さんもいないんです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマしか持っていないんです」
「ワッハッハッハ」
門番が、ふきだしました。
「王さまに、おつたえしよう」
「ワッハッハッハ」
王さまも聞いて、大きな口をあけて笑いました。
「なんだと。ウマを食べたブタを食べたイヌを食べたネコを食べたマメだと。こりゃ、おもしろい」
「あのう、王さま」
と、ギアッコがいいました。
「そのはんたいです。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマですよ」
「ワッハッハッハ」
王さまは、おなかをかかえて笑いました。
「おっと、まちがえたか。ウマを食べたマメだったな。いいや、マメを食べたウマだ。おや、またちがったわい。ワッハッハッハ」
王さまが笑うと、大臣も、おきさきも、お姫さまも、めしつかいも、料理番も、だれもかれも笑いました。
オホホホ・・・、ウフフフ・・・、エヘヘヘ・・・、アハハハ・・・。
すると、お城のてっぺんにある鐘(かね)が、からだをゆすってカランカランとなりました。
そして、国中の人が笑いだしました。
「ギアッコよ、まいにち、わしにはなして聞かせてくれないか。ウマを食べたマメの話・・・、いや、そのマメを食べたウマだ・・・、おっと、ちがった。マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタ食べたウマの話だ。ハッハッハッハ。なんど聞いてもおもしろい。ギアッコよ、わしのとなりにすわっておくれ」
ギアッコは金のかんむりを頭に乗せて、王さまのとなりのいすにすわりました。
そして、まいにちまいにち、マメを食べたネコを食べたイヌを食べたブタを食べたウマの話をして、国中の人が楽しくくらしました。
おしまい