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たなばたのお話し 第 4 話

七夕女房

七夕女房(たなばたにょうぼう)
高知県の民話 → 高知県の情報

※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先

投稿者 眠れる森のくま

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制作 : 果実乃ゐと⁕Kamino Ito⁕

♪音声配信(html5)
朗読者 : スタヂオせんむ

 むかしむかし、猟師(りょうし)()われたキツネが、炭焼(すみや)きをしている小五郎(こごろう)炭焼き小屋(すみやきごや)飛び込(とびこ)んで()ました。
 キツネは、びっくりしている小五郎(こごろう)()()わせて()いました。
小五郎(こごろう)さん、どうか今日(きょう)(ところ)見逃(みのが)して(くだ)さい。(かなら)ず、このお(れい)はしますから」
 そこで小五郎(こごろう)は、キツネを裏口(うらぐち)から()がしてやったのです。

 それから数日後(すうにちご)、あの(とき)のキツネが小五郎(こごろう)(ところ)へやって()()いました。
「あの(とき)は、お世話(せわ)になりました。さて、約束(やくそく)のお(れい)ですが、あなたにお(よめ)さんをお世話(せわ)したいと(おも)います」
(よめ)さんを?」
「はい。この( ごろ )、この(ちか)くの谷川(たにがわ)へ、(てん)から天女(てんにょ)水浴(みずあ)びにやって()るのです。
 天女(てんにょ)水浴(みずあ)びをする(とき)に、()ていた羽衣(はごろも)()いで()()っかけますから、それをあなたが(かく)してしまうのです。
 天女(てんにょ)羽衣(はごろも)がないと(てん)(かえ)れませんから、()()てのない天女(てんにょ)はあなたのお(よめ)さんになってくれるでしょう」

 (つぎ)()小五郎(こごろう)がキツネに(おし)えてもらった谷川(たにがわ)()ってみると、一人(ひとり)(うつく)しい天女(てんにょ)谷川(たにがわ)(たの)しそうに水浴(みずあ)びをしていました。
 小五郎(こごろう)(ちか)くの()(えだ)にきれいな羽衣(はごろも)がかけてあるのを()つけると、それを炭焼き小屋(すみやきごや)(はしら)(あな)(なか)へと(かく)したのです。
 そして(ふたた)谷川(たにがわ)()くと、(はだか)天女(てんにょ)(てん)()つめながら途方(とほう)()れていました。
「あの、そこで(なに)をしているのですか?」
 小五郎(こごろう)(こえ)をかけると、天女(てんにょ)()(なみだ)()かべて()いました。
「わたしは天女(てんにょ)なのですが、(てん)(かえ)(ため)羽衣(はごろも)()くしてしまい、どうする(こと)出来(でき)ないのです」
 すると小五郎(こごろう)が、天女(てんにょ)()いました。
「よければ、わしの(いえ)()らさないか?」
「・・・はい、お世話(せわ)になります」
 こうして天女(てんにょ)小五郎(こごろう)(いえ)()(こと)となり、そのまま小五郎(こごろう)女房(にょうぼう)になったのです。

 やがて小五郎(こごろう)天女(てんにょ)(あいだ)には男の子(おとこのこ)()まれて、その()三歳(3さい)になりました。
 女房(にょうぼう)(うつく)しいし、()どもは可愛(かわい)いし、小五郎(こごろう)毎日(まいにち)(たの)しくてなりません。
 そんなある()(こと)()どもが小五郎(こごろう)(かく)していた天女(てんにょ)羽衣(はごろも)()つけたのです。
(かあ)ちゃん、こんなきれいな着物(きもの)が、炭焼き小屋(すみやきごや)(かく)してあったよ」
「・・・・・・!」
 ()どもからそれを()いた天女(てんにょ)は、しばらく言葉(ことば)()せずに()ちつくしていましたが、やがてその羽衣(はごろも)()にまとうと()どもを()いて(てん)へと(のぼ)っていったのです。

 その()夕方(ゆうがた)仕事(しごと)から(かえ)ってきた小五郎(こごろう)は、(いえ)天女(てんにょ)()どももいないのでびっくりしました。
「こんな時間(じかん)に、どこへ()ったのだろう? ・・・はっ! もしや」
 小五郎(こごろう)があわてて羽衣(はごろも)(かく)した(はしら)(あな)()ると、やっぱり羽衣(はごろも)がありませんでした。
 一人(ひとり)ぼっちになった小五郎(こごろう)は、天女(てんにょ)()ども名前(なまえ)()んで毎日(まいにち)泣き暮(なきく)らしました。

 そんなある()(こと)(まえ)小五郎(こごろう)(たす)けたキツネが(ふたた)びやって()たのです。
小五郎(こごろう)さん。(ふたた)天女(てんにょ)()どもに()いたいのなら、(とり)(はね)(かさ)(つく)るといいでしょう。わたしがそれを、(てん)まで()()ばしてあげます」
 そこで小五郎(こごろう)(とり)(はね)(おお)きな(かさ)(つく)ると、仲間(なかま)引き連(ひきつ)れたキツネがその(かさ)一斉(いっせい)(いき)()きかけて、小五郎(こごろう)空高(そらたか)くに()()ばしてくれたのです。

 空高(そらたか)くに舞い上(まいあ)がった小五郎(こごろう)は、そのまま(かぜ)()って天界(てんかい)へとたどり()きました。
 しかし天界(てんかい)(ひろ)すぎて、どこへ()ったらいいのかわかりません。
「ああ、これからどうしたら()いのだろう?」
 小五郎(こごろう)途方(とほう)()れていると、(きゅう)(うし)ろから()どもの(こえ)がしました。
「あっ、(とう)ちゃんだ! (かあ)ちゃん、(とう)ちゃんが()ているよ!」
 すると、その(こえ)をききつけた天女(てんにょ)(はし)って()ました。
 こうして三人(3にん)親子(おやこ)は、(ふたた)出会(であ)(こと)出来(でき)たのです。
 天女(てんにょ)が、小五郎(こごろう)()いました。
「あなたが羽衣(はごろも)(かく)したと()った(とき)、つい(はら)()って()どもと一緒(いっしょ)天界(てんかい)(かえ)って()ましたが、あれからあなたを(わす)れた(こと)はありません。
 あなたに、()いとうございました。
 これから、この天界(てんかい)親子三人(おやこ3にん)()らしましょう。
 しかし、わたしの(はは)は、あなたを()くは(おも)ってはおりません。
 あなたに色々(いろいろ)(むずか)しい仕事(しごと)()いつけるでしょうが、わたしが(たす)けますから、どうか(なに)()いつけられても(おこ)らないで(くだ)さい」
「ああ、三人(3にん)()らせるのなら、(なに)()われても文句(もんく)()わない」

 (つぎ)(あさ)天女(てんにょ)母親(ははおや)小五郎(こごろう)()いつけました。
山奥(やまおく)にある大岩(おおいわ)を、お(まえ)一人(ひとり)(ちから)でかついで()なさい」
大岩(おおいわ)をですか?」
 小五郎(こごろう)(こま)っていると、天女(てんにょ)がやって()()いました。
「あなた、わたしが大岩(おおいわ)張り子(はりこ)(いわ)取り替(とりか)えておきますから、あなたは(はは)(まえ)だけ(おも)そうな身振(みぶ)りで()って()(くだ)さい」
 そこで小五郎(こごろう)天女(てんにょ)用意(ようい)した張り子(はりこ)大岩(おおいわ)を、いかにも(おも)そうにかついで(もど)りました。
 すると、天女(てんにょ)母親(ははおや)は、
「ふん。人間(にんげん)にしては、(ちから)があるようね。では山奥(やまおく)(おお)きな(はやし)があるから、その(はやし)()をみんな切り倒(きりたお)して、(うし)につけて()いて()なさい」
と、また仕事(しごと)()いつけたのです。
(はやし)()を、一人(ひとり)切り倒(きりたお)すなんて・・・」
 小五郎(こごろう)(こま)っていると、天女(てんにょ)がやって()()いました。
「ひと()りで千本( せんぼん )()切り倒(きりたお)せる(たから)(おの)があります。()って()きますから、あなたは(さき)(はやし)()って(くだ)さい」
 そこで(さき)(はやし)()った小五郎(こごろう)()切り株(きりかぶ)(やす)んでいると、天女(てんにょ)(たから)(おの)()って()てくれました。
 小五郎(こごろう)がその(おの)(かる)振り回(ふりまわ)すと、(はやし)()はたちまち切り倒(きりたお)されてしまいました。
 それを小五郎(こごろう)(うし)()かせて(いえ)(もど)ると、母親(ははおや)はまた、
「では(つぎ)に、(あわ)(あわ)を二俵(2ひょう)(はん)(うし)につけて(やま)(はたけ)()って()って、それを一面(いちめん)にまきなさい」
と、仕事(しごと)()いつけたのです。
 今度(こんど)簡単(かんたん)仕事(しごと)だと(おも)って小五郎(こごろう)(よろこ)んでいると、天女(てんにょ)がやって()()いました。
(はは)が、この(つぎ)()いつける仕事(しごと)()かっています。あなたは(はたけ)()って()った(あわ)をまかずに、(はたけ)(すみ)にでも()いておいてください」
 そこで小五郎(こごろう)(やま)(はたけ)二俵(2ひょう)(はん)(あわ)(はこ)ぶと、そのまま(はたけ)(すみ)()いて(かえ)りました。
 すると母親(ははおや)は、(つぎ)にこう()いました。
「では(つぎ)に、さっきまいた(あわ)一粒(ひとつぶ)(のこ)らず、持って帰(もってかえ)って()るのです」
 さっきは(あわ)をまかずに()いてきたので、小五郎(こごろう)はその仕事(しごと)簡単(かんたん)にやり()げる(こと)出来(でき)ました。
 それを()母親(ははおや)は、()(まる)くして()いました。
「まあ、お(まえ)ほど仕事(しごと)出来(でき)婿(むこ)は、この天界(てんかい)にもそう(おお)くはいないでしょう。
 正直(しょうじき)見直(みなお)しましたよ。
 では、最後(さいご)仕事(しごと)です。
 カラスがウリ(ばたけ)のウリにイタズラをするので(こま)っています。
 明日(あした)(あさ)から(ばん)まで、ウリ(ばたけ)(ばん)をしていなさい」
 するとそれを()いた天女(てんにょ)が、うれしそうに()いました。
「この仕事(しごと)()われば、わたしたちは平和(へいわ)()らす(こと)出来(でき)るでしょう。
 頑張(がんば)って(くだ)さいね。
 でも、わたしがお(ひる)にお弁当(べんとう)()って()くまでは、どんな(こと)があってもウリに()をつけないで(くだ)さいね」

 (つぎ)()小五郎(こごろう)はウリ(ばたけ)でウリの(ばん)をしていたのですが、なぜか(のど)(かわ)いて仕方(しかた)ありません。
 そこで小五郎(こごろう)天女(てんにょ)があれほど()っていたのを(わす)れてウリを(ひと)()ると、それを(ふた)つに()って()べようとしたのです。
 するとそのウリから、(みず)津波(つなみ)のようにわき()てきました。
 (じつ)天界(てんかい)のウリは()べるためのウリではなく、地上(ちじょう)()らす(あめ)()まった雨壺( あまつぼ ) だったのです。
 天女(てんにょ)がお弁当(べんとう)()って()(とき)には、小五郎(こごろう)はウリからあふれ()(みず)(なが)されて()くところでした。
「あなたー! もう(すこ)しの(あいだ)頑張(がんば)って(くだ)さい!」
 天女(てんにょ)(いそ)いで(いえ)(かえ)ると、(たけ)短冊(たんざく)()って(もど)って()ました。
 そして、
()びなさい》
と、願い事(ねがいごと)()いた短冊(たんざく)(たけ)(むす)びつけると、天女(てんにょ)(たけ)小五郎(こごろう)差し出(さしだ)しました。
 天女(てんにょ)差し出(さしだ)した(たけ)短冊(たんざく)()いた願い事(ねがいごと)(どお)りに、小五郎(こごろう)めがけてどんどん()びていきますが、後一歩( あといっぽ )(ところ)力尽(ちからつ)きた小五郎(こごろう)は、そのまま(なが)れに(なが)されてしまいました。
 そこで天女(てんにょ)が、(こえ)をかぎりに(さけ)びました。
「あなたー! (はは)(たの)んで、(つき)七日(なのか)(みず)(なが)れを()めてもらいます。その(とき)()いましょう!」
 ところが小五郎(こごろう)は、それを七月(しちがつ)七日(なのか)()間違(まちが)えてしまったのです。
「わかった、七月(しちがつ)七日(なのか)だな!」
 こうして二人(ふたり)は、一年(いちねん)のうちで七月(しちがつ)七日(なのか)だけにしか()えなくなったのです。

おしまい

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おりがみくらぶ 福娘童話集りんく

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