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たなばたのお話し 第 5 話
天の川と七夕
中国の昔話 → 中国の情報
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投稿者 眠れる森のくま
むかしむかし、あるところに、一人の貧しい若者がいました。
若者の仕事は、年を取った牛の世話です。
そのため人々は、若者の事を牽牛
と呼
びました。
牽牛とは、牛引
きという意味です。
ある日の事、一匹の牛が主人の牽牛に言いました。
「ご主人さま、南の川に行ってごらんなさい。美しい天女たちが水浴びをしていますよ。もし、天女をお嫁さんにしたかったら、天女の羽衣(はごろも)を一枚取り上げるのです」
「天女がお嫁さんか。いいな」
そこで牽牛が南の川に行ってみると、確かに七人の天女たちが楽しそうに水浴びをしていました。
牽牛はそっと岸に忍び寄ると、脱ぎ捨てられていた羽衣に手を伸ばしました。
しかしそれに気がついた天女たちは、あわてて自分の羽衣をつかむと、ひらりひらりと天に舞い上がってしまったのです。
それでも牽牛は、何とか一枚の羽衣を手に入れる事が出来ました。
そして羽衣を取られて天に帰る事が出来なくなった一人の天女が、泣く泣く牽牛のお嫁さんになったのです。
この天女の名前は、織姫と言います。
さて、それからほどなくして、牽牛に天女の事を教えてくれた牛が重い病気にかかりました。
牛は、牽牛に言いました。
「わたしが死んだら、わたしの皮をはいで金の粉をつめてお持ちなさい。それと一緒に、この鼻輪もお持ちなさい。そうすれば、きっと助けになるでしょう」
やがて牛が死ぬと、牽牛は言われた通りにしました。
それから、三年の月日が流れました。
織姫は牽牛との間に、男の子と女の子を一人ずつ産みました。
二人の子どもの母親になった織姫ですが、織姫は一日たりとも天の事を忘れた事はありません。
織姫は牽牛の顔色を見ては、
「わたしの羽衣は、どこにあるのですか?」
と、何度も何度も尋ねました。
しかし牽牛はいつも、
「さあ、どこにあるか忘れたよ」
と、言うばかりです。
でもとうとう、織姫は酒に酔って機嫌の良い牽牛から、羽衣を隠してある場所を聞き出したのです。
「しまった!」
ふと我に返った牽牛は、あわてて織姫を引き止めようとしたのですが、その時にはもう、織姫は衣をまとって天に舞い上がった後でした。
「頼む、行かないでくれ!」
牽牛は二人の子どもを両わきにかかえると、織姫を追ってふわりと空に飛び上がりました。
実は持っていた牛の皮の力で、牽牛は空を飛ぶ事が出来たのです。
織姫は牽牛の姿を見ると、かんざしを抜いて天に長い線を書きました。
すると線はみるみる広がって、流れの早い川になりました。
そこで牽牛は牛の皮につめた金の粉を川にまいて、金の砂地の道を作りました。
そして牽牛がなおも追いかけて行くと、織姫はまた線を引きました。
今度の線は、大きな天の川になりました。
金の粉を使い果たした牽牛には、もうどうする事も出来ません。
「ちくしょう!」
怒った牽牛は、肩にかけた鼻輪を向こう岸に投げました。
すると織姫も、
「何をするのよ!」
と、はたおりのおさを向こう岸に投げ返しました。
「二人とも、やめなさい」
ふいに、まっ白いひげの神さまが現れて言いました。
「天の世界でけんかをするとは何事です! 二人とも、今すぐ仲直りをしなさい」
神さまの命令では、仕方ありません。
牽牛と織姫は、しぶしぶ言いました。
「では、わたしたちは一年に一度だけ、会う事にします」
こうして二人は七の月の七の日に、天の川で会う約束をしたのです。
それが、七月七日の七夕です。
天の川を見ると、牽牛と織姫の星のそばには小さな星が二つ見えますが、それは夫婦げんかをした時に投げ合った、鼻輪とおさと言われています。
おしまい
たなばたのおりがみをつくろう おりがみくらぶより
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