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3年生の江戸小話(えどこばなし)

うなぎのかぎ賃(ちん)
けちんぼうな男がおりました。
まい日、まい日、ごはんどきになると、うなぎ屋(や)の前へ出かけていっては、腹(はら)いっぱい、うなぎのにおいを吸い込(すいこ)み、そのまま家へとんで帰って、うなぎのにおいでごはんを食べるのでした。
それに気がついた、うなぎ屋(や)の親父は、
「なんちゅうけちだ。よし、あのようなやつからは、においのかぎ賃(ちん)を取(と)ってやろう」
と、さっそく帳面(ちょうめん)につけておき、月末(げつまつ)になると、かぎ賃(ちん)を取(と)りにやってまいりました。
すると、けちんぼうな男は、
「やい、おれはうなぎ屋(や)に、借金(しゃっきん)をしたおぼえはないぞ」
「いえいえ、これは、うなぎのかば焼(やき)のかぎ賃(ちん)でございます。えーと、しめて八百文(→24000円ほど)ですな。においをかいで食べたつもりになっておりますので、こちらも、食わせたつもりで銭(ぜに)を取(と)りにきました」
うなぎ屋(や)がすましていうと、男はしかたなく、ふところから八百文取り出(とりだ)しました。
「へい、たしかに八百文。ありがとうございました」
と、ニコニコ顔のうなぎ屋(や)がうけとろうとしたところ、男はそれを板の間(いたのま)へほうりだしました。
チャリーン。
お金が、景気(けいき)のいい音をたてると、男はうなぎ屋(や)にいいました。
「においの代金(だいきん)は、音ではらおう。それ、銭(ぜに)の音をきいただろう。ほんとうに銭(ぜに)をうけとったつもりで、帰んな」
この勝負(しょうぶ)、うなぎ屋(や)の負(ま)けでございます。
おしまい 
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