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3年生の江戸小話(えどこばなし)

歩いていく
むかしむかし、たいへんけちんぼうな親父がおりました。
この親父が病気(びょうき)になり、いよいよ、命(いのち)があぶないというとき、子どもたちをまくらもとによびよせ、
「おまえたちにいっておくが、わしは、お寺の寄付(きふ)もたくさんしたのに、いまだに、極楽(ごくらく→天国)からは、何のおとさたもない。わしが死(し)んだからといって、これいじょう、むだな金を使(つか)ってはならぬ。かならず、金のかからない、そうしきをするんだぞ。よいな」
と、みんなにねんをおしました。
子どもたちは、
「それでは、ゆいごんどおりにいたしますが、かんおけは、こし(→かんおけを運(はこ)ぶ、専用(せんよう)のみこし)に出しましょうか?」
と、いうと、親父は、
「いや、それは金がかかりすぎる」
「では、牛車(ぎっしゃ→牛にひかせる荷車(にぐるま))で、はこびましょうか?」
「それも、金がかかる」
「それでは、ふたりぐらいに、かつがせましょうか?」
「いや、それでは、ふたりもやとわねばならぬ。金がかかるからだめ」
「では、いったい、どうしましょう?」
すると、親父は、
「えい、めんどうな。死(し)んだら、おれが歩いていこう」
おしまい 
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