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3年生の江戸小話(えどこばなし)

法話(ほうわ)
むかしむかし、ある村に、大そうえらいと評判(ひょうばん)の、坊(ぼう)さまがおりました。
坊(ぼう)さまは、村の者(もの)たちのために、毎月一回、寺で法話(ほうわ)の会を開(ひら)いています。
村人たちには、むずかしい話でしたが、なにしろえらい坊(ぼう)さまの話ということで、みんなありがたがって集(あつ)まっておりました。
ある朝のこと、坊(ぼう)さまは久(ひさ)しぶりに、外の空気でもすうかなと、散歩(さんぽ)に出かけました。
村の小道をてくてく歩いておると、やがて向(む)こうから馬子(まご→馬の世話係(せわがかり))の茂一(もいち)がやってきます。
ところがどういうわけか、茂一(もいち)は、ひどくつかれていて、ぼんやりとしたようす。
「これこれ、茂一(もいち)、どこぞぐあいでも悪(わる)いのか」
坊(ぼう)さまが、心配(しんぱい)してたずねると、茂一(もいち)は、
「いえ、いえ、お坊(ぼう)さま、きのうのお坊(ぼう)さまのお話で、夜ねむれずにこまりましたで」
それをきいた坊(ぼう)さま、自分の話がこの馬子にも、ねむれぬほどの感動(かんどう)をあたえたのかと、それはそれはよろこびました。
「そうか、それは悪(わる)いことをした。で、いったいひと晩(ばん)、何を考えておったのじゃ」
と、聞いてみました。
すると、茂一(もいち)は、
「きのうのお坊(ぼう)さまの話のとき、ええ気持(きも)ちでねむっちまったで、昼にあれだけねてしもうたら、夜にねむれるわけはねえだよ」
おしまい 
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