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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)

親指姫(おやゆびひめ)
アンデルセン童話(どうわ) → アンデルセン童話(どうわ)のせつめい
親指姫(おやゆびひめ)のぬりえ
むかしむかし、ひとりぼっちの女の人が、魔法使(まほうつか)いにたのみました。
「わたしには、子どもがいません。小さくてもかまわないので、かわいい女の子がほしいのです」
すると魔法使(まほうつか)いは、種(たね)を一粒(ひとつぶ)くれました。
女の人が種(たね)をまくと、たちまち芽(め)が出て、つぼみが一つふくらみました。
「まあ、なんてきれいなんでしょう」
女の人が、思わずキスをすると、つぼみが開(ひら)きました。
そしてなんと、そのつぼみの中に、小さな女の子がすわっていたのです。
「はじめまして。あなたの名まえは、親指姫(おやゆびひめ)よ」
女の人は、親指姫(おやゆびひめ)を、たいせつに育(そだ)てました。
親指姫(おやゆびひめ)は、お皿(さら)の海で泳(およ)ぎます。
葉(は)っぱの舟(ふね)をこぎながら、きれいな声で歌いました。
夜になると、くるみのからのベッドで眠 ねむ)ります。
おふとんは、花びらでした。
さて、ある晩 ばん)の事(こと)です。
ヒキガエルのお母さんが、寝(ね)ている親指姫(おやゆびひめ)を見つけました。
「息子(むすこ)のお嫁(よめ)さんに、ちょうどいいわ。ゲロゲロ」
ヒキガエルのお母さんは、親指姫(おやゆびひめ)を連(つ)れていくと、スイレンの葉(は)っぱにのせました。
「さあ、起(お)きるんだよ。今日からお前はわたしの息子(むすこ)のお嫁(よめ)さんだよ。そしてこの沼(ぬま)が、お前の家さ。息子(むすこ)をつれてくるから、ここにいるんだよ。ゲロゲロ」
ヒキガエルのお母さんは、そういって、どこかへいってしまいました。
「ヒキガエルのお嫁(よめ)さんになるのはいや。ドロの沼(ぬま)もきらいだわ」
親指姫(おやゆびひめ)は、泣き出(なきだ)しました。
「かわいそうに。逃(に)がしてやろうよ」
近くにいたさかなたちが、スイレンのくきをかみ切りました。
「ありがとう。さかなさん」
スイレンの葉(は)っぱは、流(なが)れに流(なが)れていきます。
親指姫(おやゆびひめ)は、飛(と)んでいたチョウチョウを、葉(は)っぱに結(むす)びつけました。
チョウチョウはヒラヒラ飛(と)んで、葉(は)っば、はどんどん川を下っていきます。
「おや、珍(めずら)しい虫がいるぞ」
コガネムシが親指姫(おやゆびひめ)をつかまえて、森の奥(おく)へ連(つ)れて行ってしまいました。
森の奥(おく)で、親指姫(おやゆびひめ)は、ひとりぼっちで暮(く)らしました。
花のミツを食ベて、草にたまったつゆを飲(の)んで、葉(は)っぱにくるまって眠(ねむ)ります。
やがて冬がきて、空から雪が降(ふ)ってきました。
「ああ、なんて寒(さむ)いのかしら」
ふるえながら歩いていた親指姫(おやゆびひめ)は、野ネズミの家を見つけました。
「おやおや、寒(さむ)い中をかわいそうに。さあお入り。中はあったかいし、食ベ物(もの)もたくさんあるよ」
親指姫(おやゆびひめ)は、野ネズミといっしょに、暮(く)らすことになりました。
さて、野ネズミの家のさらに地面(じめん)の奥(おく)には、お金持(かねも)ちのモグラが住(す)んでいました。
「なんて、かわいい人だろう」
親指姫(おやゆびひめ)が気に入ったモグラは、毎日遊(あそ)びにきます。
ある日のこと、親指姫(おやゆびひめ)は、倒(たお)れているツバメを見つけました。
やさしい親指姫(おやゆびひめ)は、毎日ツバメの世話(せわ)をしました。
「どうか元気になって、もう一度(いちど)歌って、ツバメさん。わたしはあなたの歌が、大好(だいす)きよ」
春になると、ツバメはすっかり元気になって、親指姫(おやゆびひめ)をさそいました。
「いっしょに、南の国へいきましょう。南の国は、とってもいいところですよ」
「ありがとう。でも、いけないわ」
「どうして?」
「だって、わたしがいなくなったら、お世話(せわ)になった野ネズミのおばあさんがさびしがります」
「そうですか。では、さようなら」
ツバメは、親指姫(おやゆびひめ)に礼(れい)を言うと、南の国へ飛(と)んでいきました。
夏がくると、野ネズミがいいました。
「よかったわね。お金持(かねも)ちのモグラさんが、あなたをお嫁(よめ)にほしいんですって。秋になったら、モグラさんと結婚(けっこん)するんですよ」
親指姫(おやゆびひめ)は、ビックリしました。
モグラと結婚(けっこん)したら、ずっと地面(じめん)の底(そこ)で、暮(く)らさなければなりません。
モグラは、お日さまも花も大きらいなのです。
夏の終(おわ)りの日、親指姫(おやゆびひめ)は、野原でいいました。
「さようなら、お日さま。さようなら、お花さんたち。わたしは地面(じめん)の底(そこ)にいって、もう二度(2ど)とあなたたちに会えません」
親指姫(おやゆびひめ)はかなしくなって、泣き出(なきだ)しました。
そのとき、空の上から明るい声が聞こえました。
「おむかえに来ましたよ」
あのときのツバメが、飛(と)んできたのです。
「さあ、今度(こんど)こそ、いっしょにいきましょう」
「ええ、いきましょう」
ツバメは親指姫(おやゆびひめ)を背中(せなか)にのせて、飛(と)んでいきました。

南へ南へ、何日も飛(と)んで、着(つ)いたのは花の国です。
ツバメは花の上に、親指姫(おやゆびひめ)をおろしました。
「ようこそ、かわいい人」
声にふりかえると、親指姫(おやゆびひめ)と同じくらいの男の子が立っていました。
花の国の、王子さまです。
「さあ、これをどうぞ」
王子さまは、親指姫(おやゆびひめ)の背中(せなか)に、羽をつけてくれました。
それから親指姫(おやゆびひめ)は、花の国の王子と結婚(けっこん)しました。
二人は花から花へと飛(と)びまわりながら、しあわせに暮(く)らしました。
おしまい 
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