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9月17日の世界の昔話

よわむしのドロボウ

よわむしのドロボウ
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 むかしむかし、ある町に、貧乏な仕立て屋が住んでいました。
 この仕立て屋、わるい人ではありませんが、生まれつきのなまけ者で、いつも人からお金をかりていました。
 あんまりおおぜいの人からお金をかりたので、とうとう、返すことができなくなってしまいました。
「そうだ、死んだまねでもしてみよう。みんなはほんとうに死んだと思って、かしたお金のことをゆるしてくれるかもしれないぞ」
 仕立て屋はそう思いついて、おかみさんにかんおけを買ってこさせました。
 そしてその中に入って、死んだふりをしました。
 おかみさんが、かんおけの前で泣きまねをすると、仕立て屋が死んだといううわさがすぐに広がりました。
「仕立屋が死んだってさ」
「しまった。おれはあの男に金をかしてあったんだがなあ」
「おれもだよ。でも、死んでしまったものはしょうがない」
 お金をかしてあった人たちは、返してもらえないのをざんねんがりましたが、死んでしまったのではしかたがないと、あきらめました。
 ところが一人だけ、あきらめない男がいました。
 けちんぼうで有名な、クツ屋でした。
 クツ屋は貧乏でしたが、それでも仕立屋に、お昼のパン代をかしていたのです。
 わずかな金額ですが、貧乏なクツ屋にとっては大金です。
 クツ屋はなんとかして、そのお金を取り返そうと思いました。
「ようし、お寺にいって、仕立屋のからだから、パン代ぶんだけ服をはぎ取ってこよう」
 その晩おそく、クツ屋はお寺へ出かけていきました。
 仕立屋のはいったかんおけは、お堂の中にはこびこまれていました。
 仕立屋は、かんおけの中がせまいので、きゅうくつでたまりません。
 でも自分は死んだことになっているので、つらいのをがまんして、ジッと目をつぶっていました。
 やがて、ま夜中になりました。
 仕立屋は、もうどうしても、ジッとしていることができません。
「もう、みんなねているだろう。かんおけからちょっと出てひと休みしても、だいじょうぶだろう」
 こう思って、かんおけから出ようとしました。
 一方、クツ屋は仕立屋のからだから服をはぎ取ってやろうと、お堂のすみにかくれていました。
 そのとき、ドカドカと音がして、おおぜいの男たちがお堂の中にはいってきました。
「おや、あの男たちも、仕立屋の服をはぎ取りにきたのかな」
と、クツ屋は思いましたが、そうではありません。
 この男たちは、ドロボウだったのです。
 あちこちでぬすんできたお金を、このお堂の中でわけようと思って、やってきたのでした。
「おい、金をわけたら、にぎやかに酒でものむとしないか」
「よかろう。こんやは金もたくさん手にはいったんだからな」
 ドロボウたちは、かんおけのそばまでいって、お金のはいった袋をおろしました。
 そして、うす暗いロウソクのあかりの下で、お金をわけはじめました。
 みんな、おなじずつ取りましたが、まだあとにいくらかのこりました。
「その金は、どうする?」
「こんやのことを考えたのはおれだから、おれがもらおう」
「いや、こんやはおれがいちばんよくはたらいた。だから、おれがもらうのがあたりまえだ」
「まて、まて、二人とも。おれが一番年上だから、おれがもらおう」
 みんなは、かってなことばかりいっています。
 すると、なかの一人がいいだしました。
「じゃ、いちばん勇気のある者がもらうことにしないか?」
「と、いうと?」
「このかんおけの中の死人に、ナイフをつきさした者がもらうことにしよう」
 みんなは、こわごわながらもさんせいしました。
 ドロボウたちは、ナイフを取り出しました。
「おまえからやれよ」
「いや、おまえがさきにやれ」
 これを聞いた棺おけの中の仕立て屋は、ブルブルとふるえだしました。
 そして、
「い、い、いのちだけは、どうかおたすけください!」
と、さけびながら、棺おけの中からとびだしたのです。
 それを見たクツ屋が、大あわてでどなりました。
「こら!」
 ドロボウたちは、ビックリ。
「おばけだー!」
「ゆうれいだー!」
「神さま、おたすけくださーい!」
と、さけびながら、にげていきました。
 さて、仕立屋とクツ屋は、目から火花を出してにらみ合っています。
「やい、きさまは生きてたのか!」
「おまえは、こんな夜中になにしにきたんだ!」
 二人は、いまにもつかみかかろうとしましたが、そこらじゅうにちらばっているたくさんのお金を見ると、すぐにけんかをやめました。
 二人はお金をあつめて、半分ずつにわけました。
「これで、なかなおりしようや」
と、仕立屋がいいましたが、
「なかなおりするまえに、おまえにかしてあるパン代を返してくれ」
「なんだと。おれのおかげで、おまえはこんなにたくさんの金を手にいれたんじゃないか。パン代ぽっち、いいだろう」
「だめだ、だめだ。パン代はかえしてくれ」
 クツ屋は、どうしてもしょうちしません。
 さて、逃げ出したドロボウたちは、お堂へおいてきたお金がおしくてなりません。
「おばけにおどかされたなんて、なさけないとは思わないか」
「まったくだ。おばけをこわがってちゃ、ドロボウはできないな」
 みんなは元気をだして、お堂にもどっていきました。
 お堂のそばまでいくと、中からどなりたてる声がきこえてきました。
「パン代返してくれ。おれのパン代を返せ。やい、さっさとパン代返せ!」
 それをきいたドロボウは、ふるえあがりました。
「あんなにたくさんのお金があるのに、どうして、パン代のことばかり、いっているのだ?」
「やっぱり、おばけなんだよ」
 ドロボウどもは、まっさおになってにげていきました。

おしまい

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