福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 1月の世界昔話 > ライオンのメガネ
1月28日の世界の昔話
ライオンのメガネ
ヴィルドラックの童話
とおいとおいところに、動物の国があり、その国の王さまはライオンでした。
そのライオンは、たくさん年をとったおじいさんですが、まだまだりっぱに動物の国をおさめていました。
「みなの者、弱い者いじめをしてはならないぞ。自分より弱い者、小さい者をいじめた者は死刑(しけい)にする」
ライオンの王さまはそう決めて、動物の国でも小さくて弱い者のウサギやヒツジをまもってやりました。
りっぱでやさしい王さまを、動物たちはみんな大好きでした。
ところが近ごろ、ライオンは目が見えなくなってきたのです。
だれでも年をとると、目がかすんできますが、それはライオンも同じで、あたりがボーッと見えて、うまく走ることができなくなってしまいました。
それを見て大喜びしたのは、大臣(だいじん)のトラです。
ライオンが王さまのつとめを果たせなくなったときには、トラが王さまになれるのです。
「もうすぐライオンは目が見えなくなって、なんにもできなくなるぞ。そうしたら、わしが動物の国の王さまだ。王さまになったら、弱虫やチビの動物は、片っぱしから食ベてやる」
トラは、そう思っていました。
そして動物たちはみんな、トラの考えていることを知っていました。
「どうかライオンの目が、もう一度よく見えるようになりますように。トラが王さまになりませんように」
ライオンが大好きな動物たちは、みんな一生けんめいに願いました。
けれど、ライオンの目はだんだん悪くなるばかりです。
「ああ、わしはもう、王さまとして動物の国をおさめることができないのかな」
ある日のこと、ライオンはため息をつきながら、トボトボと歩いていました。
すると、ほら穴の奥のほうから人間のにおいがしてきます。
目は見えなくても、鼻はまだきくライオンは、そっとほら穴にはいっていきました。
ほら穴の奥では、人間のおじいさんが一人で本を読んでいました。
おじいさんは大きなライオンが近づいてきたのを見ると、ビックリしてさけびました。
「た、助けてください!」
「人間のおじいさん、どうかビックリしないでください。わたしは、あなたを食べようなんて思っていません。ただ、あなたがとても年をとっているのに、こんな小さい字の書いてある本が読めるのを、ふしぎに思ったのです。年をとっても目がかすまない薬でも持っているのかと、聞きたいのです」
ライオンは、このごろ目が見えなくて困っていることを、おじいさんに話しました。
王さまの位をねらっている、いじわるでわがままなトラのことも話しました。
ライオンの話を聞いたおじいさんはニッコリして、おでこにのせていた物をライオンにわたしました。
「年をとっても目が見えるのは、これのおかげじゃよ」
それは、メガネでした。
「あんたは、やさしいライオンじゃ。王さまらしいりっぱなライオンじゃ。あんたがいつまでも王さまでいられるように、このメガネをあげよう」
おじいさんは、ライオンにメガネをかけさせてくれたのです。
するとたちまち、あたりの物がハッキリと見えてきました。
草の葉っぱにとまっている、小さなテントウムシまで、ちゃんと見えました。
ライオンは大喜びでメガネをもらうと、ウォー、ウォーと、喜びながら、岩を飛びこえて走って帰りました。
「ばんざーい、ばんざーい。王さまの目が見えるようになったぞ!」
動物たちは大喜びで、ライオンをむかえました。
たった一人、トラだけは、ガッカリして病気になってしまいましたけれど。
それからずっとライオンは元気で、今もメガネをかけて、動物の国をりっぱにおさめているのです。
おしまい