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2009年 2月15日の新作昔話

冬の竹の子

冬の竹の子
佐賀県の民話佐賀県情報

 むかしむかし、とても親思いの息子が、年寄りのお母さんと二人で住んでいました。
 ところがある年の冬、お母さんが病気になってしまったのです。
 息子はもう心配で心配で、ごはんものどを通りません。
 昼も夜もつきっきりで、お母さんの看病をしました。
 雪の降るある日、お母さんが、
「ああ、竹の子が食べたい」
と、言いました。
 でも竹の子は春から夏にとれるもので、雪の降る季節にとれるはずがありません。
(どうしよう? でも何とかして、お母さんの願いをかなえてあげたいなあ)
 そこで息子は、お母さんに言いました。
「それじゃ、山へ行って竹の子を探してくるから待っていて」
 息子は山奥の竹やぶを見つけては、竹の子は無いかと探しましたが、竹の子は一本も生えていません。
「ない、ないよ」
 でもお母さんの事を思うと、ないとわかっていても、探さずにはいられないのです。
「神さま、お願いです。一本でいいから、竹の子を下さい。お母さんに、食べさせてあげたいのです」
 息子は竹やぶを見つけるたびに、手を合わせました。
 そのうちに、あたりがだんだん暗くなってきました。
(仕方がない。今日は、あきらめよう)
 息子が帰ろうとした時です。
 なんと目の前に、一本の竹の子がのびているではありませんか。
「あった!」
 むちゅうで竹の子を掘り出すと、飛ぶようにして家に帰りました。
 息子はさっそく竹の子を煮て、お母さんに食べさせてあげました。
「ああ、なんてうまい竹の子じゃ」
 お母さんは、涙を流しながら竹の子を食べました。
 すると不思議な事に、次の日からお母さんの病気はだんだんよくなり、やがてすっかりもとの体に戻ったという事です。

おしまい

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