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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 > ヌエ 
      2008年 7月16日の新作昔話 
          
          
         
        ヌエ(鵺) 
  京都府の民話 → 京都府情報 
       むかしむかし、京の都の御所の林で、夜になるとヌエというあやしい鳥が、気味の悪い声で鳴いていました。 
         不吉な鳴き声なので、御所の人たちは源頼政(なみもとのよりまさ)という弓の名手に、ヌエを討ち取る事をたのみました。 
         頼政は、一一五三年(→仁平(にんぴょう)三年)五月二十日に御所へやってきました。 
         そして、ヌエがあらわれる夜になるのを待っていました。 
         やがて夜もふけて、あたりはふかい闇につつまれました。 
        「こんなに暗くては、ヌエがどこにおるのかわからない。さしもの頼政も、討ち取ることは出来ないだろう」 
         御所の人たちは心配していましたが、頼政には考えがありました。 
         頼政は、夕方にヌエの鳴き声が聞こえていた林の前にいきました。 
         そして鳴き声が聞こえた方角にむかって、まず大きなうなりをつけた矢を放ちました。 
         ビュュュューーーーー! 
         矢は大きな風音をたてて、闇の中へすいこまれていきました。 
         するとその音におどろいたのか、ヌエが羽音をたてて、まっ暗な空へ舞いあがったのです。 
         その羽音をたしかめると、頼政は力をふりしぼって、すかさず二の矢を放ちました。 
         すると闇の空から、矢に射ぬかれたヌエが落ちてきたのです。 
         頼政の見事な腕前に、どっと歓声があがりました。 
         人々はさっそく、射落とされたヌエのそばに駆け寄りましたが、その奇妙な姿を見てびっくりです。 
         そのヌエの姿は、頭はサル、体はタヌキ、手足はトラ、しっぽはヘビだったのです。 
        「これはめずらしい生き物だ。よし、都の人々にも見せてやろう」 
         そこで御所では、このヌエを京の町の人たちに見せることにしました。 
         ところがそれからすぐに、疫病がはやりだしたのです。 
        「この疫病は、ヌエのたたりかも知れない」 
         おそれた役人たちは、ヌエを川へ流しました。 
         そしてそれが流れついたのが、大阪の都島だったのです。 
         京の町の噂を聞いていた都島の人たちは、たたりをおそれて、すぐにヌエを塚に埋葬しました。 
       それが今も大阪の地下鉄都島駅の商店街裏手に残る、都島のヌエ塚なのです。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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