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2008年 11月2日の新作昔話

白いおうぎと黒いおうぎ

白いおうぎと黒いおうぎ
沖縄県の民話沖縄県情報

♪音声配信(html5)
朗読者 ; 一宮 彩

 むかしむかし、あるところに、二人姉妹の娘がいました。
 お姉さんの方はとてもきれいな顔をしているのに、どういうわけか、妹の方はちっともきれいではありません。
 だからお母さんも、きれいな顔のお姉さんばかり可愛がっていました。
 ある日、二人一緒に道を歩いていると、向こうから馬に乗った男の人がやってきて、
「この村のお宮へ行くには、どっちへ行けばいいのか?」
と、たずねました。
 男の人はひげだらけの顔をしていて、よごれた着物を着ていました。
(こんな人とは、口をきくのもいやだわ)
 そう思ったお姉さんは、聞こえないふりをして下を見ていました。
 でも、親切な妹は、
「それでは、わたしが案内してあげましょう」
と、言って、村はずれにあるお宮さんまで男の人を連れて行ってあげました。
 お宮の前までくると、男の人はふところから白いおうぎを出して言いました。
「わたしは人間の姿をしているが、本当は山の神じゃ。お前はまことに親切な娘。お礼にこのおうぎであおいでやろう」
 山の神さまが白いおうぎで娘をあおぐと、どうでしょう。
 娘の顔は、みるみるきれいになりました。
「それにしても、お前の姉さんはひどい。わしのきたないかっこうを見て、口をきこうともしなかった。いくらきれいな顔をしていても、心はまっ黒だな」
 そう言って、山の神さまはお宮の中へ消えて行きました。
 さて、もどってきた妹を見て、お姉さんは目をまるくしました。
 色が黒くてみっともない顔の妹が、見ちがえるほどきれいになっていたのです。
「どうして、そんなにきれいになったの?」
 お姉さんは、くやしくてたまりません。
 そこで妹からわけを聞き、すぐにお宮さんへ飛んで行きました。
「山の神さまお願いです。わたしもおうぎであおいでください」
 するとお宮の中から、山の神さまが出てきて、
「そんなにあおいでほしけりゃ、のぞみ通りにあおいでやろう」
と、言って、ふところから黒いおうぎを取り出すと、お姉さんをあおぎました。
 すると、白かったお姉さんの顔はみるみる黒くなり、とてもひどい顔になりました。
 でも、それを知らないお姉さんは喜んで、妹のところへもどってきました。
「どう、すごくきれいになったでしょう?」
 妹は何も言えなくて、首を横にふりました。
「えっ?」
 お姉さんはあわてて近くにある池に行くと、水に顔をうつしてみました。
 するとそこにうつっているのは、色の黒い娘の顔でした。
「どうしよう、どうしよう」
 お姉さんはすぐにお宮へ行って、元の顔にもどしてくれるよう頼みました。
 でもどこへ消えたのか、山の神さまは二度と姿をあらわしませんでした。
 さて、妹はますますきれいな娘になって、その国のお殿さまの奥方になり、いつまでも幸せにくらしたそうです。
 しかしお姉さんの方は、一生、黒い顔のままでした。

おしまい

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