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    福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 竜と琵琶法師 
      2008年 11月12日の新作昔話 
          
          
         
  竜と琵琶法師 
  長野県の民話→ 長野県情報 
       むかしむかし、志賀(しが→琵琶湖南西岸一帯の古称)の山道を一人の琵琶法師が歩いていました。 
         長い旅に疲れた法師は、山の池のほとりに腰をおろしてひと休みし、そこで法師は琵琶を手に取り、美しい調べを弾いたのです。 
         ところがそのとき、どこからともなく、 
        「すまんが、もう一曲弾いてくだされ」 
        と、声が聞えました。 
         そこで法師は、もう一曲、琵琶を弾いたのです。 
         すると突然、法師の目の前に大きな竜が現われて、法師に語りかけたのです。 
        「わしはこの志賀の山に棲む竜じゃ。このところ元気が出ずに困っておったが、お前の琵琶の音を聞いて力が湧いてきた。その礼にお前だけに教えてやろう。わしは祭りの夜に大水を出して、ふもとの村を押し流すつもりじゃ。お前だけは早く逃げるがよい。それからこの話は、決して他人に言うでないぞ」 
         こう言ったとたんに、竜は姿を消しました。 
         さて、法師が山を下りて、ふもとの村へ入ると、村人たちは祭の用意で大忙しです。 
         法師は竜に言われた通り、何も言わずに通り過ぎようとしました。 
         しかし村人たちのことが気になって、仕方ありません。 
         そしてとうとう、思い切って村人たちに叫んだのです。 
        「大変じゃ! 今夜、大水が来るぞ! 早く逃げてくれ!」 
         法師の声を聞いた村人たちは、大急ぎで高台へと逃げました。 
         そして、その夜のこと。 
         にわかに稲妻が光ったかと思うと、大きな雷の音とともに大雨が降り続けたのです。 
         そして竜の予告通りに、大水が村を襲いました。 
         やがて雨もあがり、高台に逃げた村人たちは法師のおかげで命びろいをしました。 
        「ああ、あの法師さまのおっしゃったことは本当じゃった。おかげで、わしら村のもんはみんな助かった。あのお方は、一体どこへ行かれたのか」 
         村人たちは法師を探しましたが、法師の姿はどこにもありません。 
         それから数日後のこと。 
         村の若者が志賀の山へ登ると、志賀の山の池に法師の琵琶が浮かんでいるのを見つけたのです。 
         竜との約束を破った法師は、竜に命を絶たれてしまったのです。 
        「ああ、法師さまは、わしらの身代りになったんじゃ。本当に立派なお方じゃ」 
       村人たちは、心から法師に礼を言いました。 
      おしまい 
         
          
         
        
       
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