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福娘童話集 > きょうの新作昔話 > 蚊渕(かぶち) 弘法話
2011年 2月4日の新作昔話

蚊渕(かぶち) 弘法話
香川県・坂出市の民話→ 香川県の情報
むかしむかし、香川県坂出市の高屋(たかや)というところに、与平(よへい)と、おときという夫婦がいました。
この夫婦は貧しいけれど、とても心優しい夫婦です。
さて、この高屋にある遍照院(ほんじょういん)という寺では、弘法大師(こうぼうたいし)が修業をしていました。
大師はこの寺でお経を読んだり、村々へ托鉢(たくはつ)に回ったりと、忙しい毎日を過ごしています。
それを知った与平夫婦は、大師のために食べ物を用意したり、風呂をわかしてあげたりと、大師の身のまわりのお世話をしてあげたのです。
そんな毎日が続いているうちに、大師は二ヶ月間の修業を終えました。
そして、修行を終えた大師がこの村を出発する前の日の事、二ヶ月の間、色々とお世話をしてもらった与平夫婦を寺に招待したのです。
大師は、与平夫婦に深々と頭を下げて言いました。
「長い間、本当にお世話になりました。そのお礼に、何かお返しをしたいと思います。遠慮無く、欲しい物を言って下され」
「いえいえ、お返しなど、とんでもありません。わしらはただ、お大師さまのお役に立てただけでうれしいのです」
夫婦は、自分たちの望みをなかなか答えません。
「それでは、何か困った事でもあれば、話をして下され」
「そうですな。私どもは毎晩、蚊(か)に悩まされています。といっても、かやを買うほどのぜいたくもできませんので」
その話を聞いた大師は、次の朝、与平夫婦の家を訪ねました。
そして部屋のまん中で正座して、何やらお経の様なものを唱えました。
すると、どうでしょう。
家中の蚊が一斉に、大師の両手の中に寄せ集められたではありませんか。
そして大師は、お団子の様に集まった蚊の固まりを近くの沼へ捨てました。
「これで大丈夫。この家には二度と蚊は現れないでしょう」
大師はそう言うと、再び修行の旅に出かけました。
大師の言葉は本当で、それから与平夫婦の家の中には、一匹の蚊も現われなくなりました。
そして今も、大師が蚊を捨てたという場所が、『蚊渕(かぶち)』と呼ばれて残っているそうです。
おしまい

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