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2011年 10月10日の新作昔話
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イラスト myi ブログ sorairoiro
ほら吹き男爵 イノシシの親子
ビュルガーの童話 → ビュルガーの童話について
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
今日は、すこし良い話を聞かせてやろう。
ある深い森の中で、わがはいはイノシシの親子を見つけた。
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「これは、よい獲物だ」
イノシシの肉は食べると体が温まるので、寒い冬にはもってこいだ。
わがはいはすぐに鉄砲を構えると、狙いを付けて引き金を引いた。
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ズトーン!
しかし名人でも、時には失敗をする。
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鉄砲の玉はどこかへと飛んで行き、その音にびっくりしたイノシシの子が一目散に逃げて行った。
だが、なぜか母親の方はそこに立ち止まったまま、一歩も動こうとしない。
「はて、なぜ逃げないのだろう? ・・・おや?」
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よく見ると、この母親は目が見えず、口にイノシシの子の尻尾の切れはしをくわえていたのだ。
イノシシの子は自分の尻尾を目の見えない母親にくわえさせて道案内をしていたのだが、どうやらわがはいのはずれ玉が、そのイノシシの子の尻尾の中ほどを切ってしまったらしい。
だから母親は、動く事が出来ないのだ。
「ああ、何と美しい、親子の愛情だ」
わがはいの目から、思わず涙がポロリとこぼれた。
「まったく、玉が当たらなくて良かったわい」
もしも親子のどちらかに玉が当たっていたら、残った方から残酷な人間とうらまれたに違いない。
「おふくろさん。おどかして、すまなかった。もう二度と狙わないから、元気で暮らせよ」
わがはいは、まだ食べていないお昼のお弁当を母親の前に置くと、その場を後にした。
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そして、やがて戻ってきたイノシシの子と母親は、わがはいのお弁当をおいしそうに食べると、母親は短くなったイノシシの子の尻尾を再びくわえて、森の中へと入って行った。
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『親子の愛はこの世でもっとも美しい物で、なんびともそれを引き離してはいけない』
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これが、今日の教訓だ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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