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福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 1月の世界昔話 > ホタルとオナガザル 
      1月25日の世界の昔話 
          
          
         
  ホタルとオナガザル 
  フィリピンの昔話 → フィリピンの国情報 
      
       むかしむかし、フィリピンの島には、『夕方(ゆうがた)』というものがありませんでした。 
   いままでお日さまが、カンカンにてりつけていたかと思うと、たちまちまっくらな夜になってしまうのです。 
   くらくなると、ホタルたちがチラチラとまたたきながらとびまわります。 
   ある晩のこと、一匹のホタルが、友だちのところへ遊びにでかけました。 
   ホタルは自分の小さなあかりで道をてらしながら、シュロ(→ヤシ科シュロ属の常緑高木の総称)の木のあいだをとんでいきました。 
   それを、高い木にのぼっていたオナガザルが見つけました。 
   オナガザルはホタルをよびとめて、からかいます。 
  「もしもし、ホタルさん。どうしてわざわざ、あかりなんかつけているんだね?」 
  「うるさいカを、追いはらうためですよ」 
  と、ホタルはこたえました。 
  「なーるほど」 
   オナガザルは、ホタルを鼻で笑います。 
  「つまりあんたは、ちっぽけなカが、おそろしいってわけだな。・・・よわむしだね」 
  「よわむしとはちがいます。カなんかおそろしくない。ただ、ほかのものにじゃまされたくないだけですよ」 
   オナガザルは、また鼻で笑いました。 
  「いやいや。よわむしにきまっている。あかりをつけているのは、カがおそろしいからさ」 
  「・・・・・・」 
   ホタルは、そのままだまっていってしまいました。 
   オナガザルは、あいてにされなかったのでおもしろくありません。 
   あくる朝、あちこちのサルのところへでかけていって、ホタルのことをふれまわりました。 
  「ホタルはすごく、よわむしだぞ」 
  「まったく、あきれたよわむしだ」 
   サルたちはみんなで、ホタルをバカにして笑いました。 
   それを聞いたホタルは、オナガザルをこらしめてやろうと思い、オナガザルのところへとんでいきました。 
   オナガザルは、ねむっていました。 
   ホタルは自分のあかりを、オナガザルの鼻さきにつきつけました。 
   オナガザルは、ビックリして目をさまします。 
  「なぜ、ぼくのことをよわむしだなんてふれ歩いたんだ?」 
  と、ホタルはきびしくたずねました。 
  「あしたの朝、シュロの林まできてくれ。ほかの鳥やけものにもきてもらって、ぼくがよわむしかよわむしでないか見てもらう」 
  「ハッハッハッハッ」 
   オナガザルは、大口あけて笑いだしました。 
  「おまえさん、おれと勝負しようというのかい?」 
  「そうだとも」 
   ホタルは、きっぱりとこたえました。 
  「いったい、だれにたすけてもらうつもりだい? 一人じゃ、とうていかないっこないだろう」 
   オナガザルは、からかうように聞きました。 
  「一人だとも!」 
  「一人だって?」 
   オナガザルは、あきれました。 
  「そう、一人だ。もっとも、こわいのならやめてやってもいいが」 
  「おもしろい。やろうじゃないか!」 
  と、オナガザルはさけびました。 
  「だが、ことわっておくが、こっちは一人じゃいかないぞ。仲間を集めていくからな。それもすごくつよいやつばかりをな」 
   ホタルが帰ると、オナガザルは友だちのところをつぎつぎとたずねて、 
  「あしたの朝、こん棒をもってシュロの林にきてくれ」 
  と、たのみました。 
   朝がきて、お日さまがあかるくてらしはじめました。 
   ホタルはおちついて、戦いのはじまるのをまっていました。 
   オナガザルが、おおぜいのサルをつれてやってきました。 
   そしてホタルを見つけると、オナガザルが先頭にたって、こん棒をふりまわしながらおそいかかってきました。 
   ホタルはスイーッととんで、オナガザルの鼻先へとまりました。 
  「このホタルめっ!」 
   そばにいたサルが、ホタルめがけて力いっぱいこん棒をうちおろします。 
   ところがホタルは、それよりはやくヒョイととびのきました。 
   こん棒はオナガザルの鼻にあたり、オナガザルはギャン! とさけんでたおれました。 
   つぎにホタルは、二匹目のサルの鼻にとまりました。 
   三匹目のサルが、こん棒をふりおろしますが、またもやホタルは、ヒョイとにげて、こん棒は二匹目のサルの鼻にあたって、これものびてしまいました。 
   ホタルはつぎからつぎへと、サルの鼻さきにとびうつりました。 
   サルのほうはホタルをねらっては、おたがいの鼻をなぐりあい、とうとう一匹のこらずのびてしまいました。 
   かしこくていさましいホタルは、大きなサルたちに勝ったのです。 
  「さあ、これでもぼくはよわむしで、カをおそれているという気かい?」 
   ホタルは勝ちほこってさけぶと、地面にたおれているサルの上をクルクルとまわって、ひきあげていきました。 
   サルたちははずかしくて、赤い顔がますます赤くなりました。 
      おしまい 
         
         
         
        
 
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