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福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 1月の日本昔話 > 乙姫様のくれたネコ

1月25日の日本の昔話

乙姫様のくれたネコ

乙姫様のくれたネコ

 むかしむかし、三人の娘を持ったお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
 三人とも、とっくに嫁いでいたのですが、どういうわけか一番上の娘だけはひどい貧乏暮らしで、その日の食べ物もあるかないかの有様です。
 お百姓さんは毎年暮れになると、三人の娘の婿を呼ぶ事にしていました。
 妹二人の婿は金があるので、お土産に酒やら炭俵(すみだわら)をたくさん持って来ます。
 お百姓さんも、おかみさんも大喜びで、
「よう来た、よう来た。さあ、遠慮無く入りなさい」
と、言いながら、ごちそうを出してもてなしました。
 ところが姉婿は金がないので、いつも山から取って来たしばの束をかついで行き、
「たきつけにでも、して下さい」
と、言いました。
(ふん。こんな物しか、持って来れらないのか)
 お百姓さんもおかみさんも馬鹿して、姉婿にはただの一度もごちそうを出した事がありません。

 さて、今年も年の暮れになり、三人の婿たちがお百姓さんの家へ呼ばれる事になりました。
 相変わらず、しばの束しか持っていけない姉婿は、家を出たものの、どうしてもお百姓さんの所へ行く気がしません。
(どうせ持って行って馬鹿にされるだけだ。それなら、乙姫(おとひめ)さまに差し上げた方がましだ)
 姉婿は海辺に行くと、
竜宮(りゅうぐう)の乙姫さま、おらのお歳暮(おせいぼ→年の終わりに贈る贈り物)にもらって下さい」
と、言って、海の中にしばの束を投げ込みました。
「・・・さあ、家に帰るとするか」
 姉婿がそのまま家に帰ろうとすると、ふいに海の中から美しい女が出て来て言いました。
「ただいまは、結構(けっこう)な物をありがとうございました。乙姫さまがお礼をしたいそうですから、わたしと一緒に来て下さい」
 姉婿は、ビックリです。
「と、とんでもない。おらあ、お礼なんかいらねえ。それに泳ぐ事も出来んし」
「大丈夫ですよ。わたしがおんぶしていきますから、目をつむっていて下さいな。さあ、遠慮せずに、わたしの背中に」
 女が親切に進めるので、姉婿は仕方なく女におぶさって目をつむりました。
 その途端、気が遠くなって何が何だかわからなくなりました。
「さあ、お疲れさま。着きましたよ」
 言われて目を開けると、何と立派な座敷(ざしき)に座っているではありませんか。
 目の前には山の様なごちそうがあり、美しい音楽まで聞こえてきます。
「ささっ、どんどん召しあがれ」
 女のついでくれるお酒を飲んだ姉婿は、思わずうなりました。
 こんなうまい酒は、今まで飲んだ事がありません。
 それにごちそうも信じられないほどのうまさで、まるで夢を見ている気分です。
 姉婿がウットリしていると、女が小声で言いました。
「乙姫さまが何かあげようと言われたら、『何もいりませんが、ネコを一匹下さい』と、言いなさい」
(でも、貧乏だからネコなんかもらっても、育てられるかな?)
 姉婿が考えていたら、乙姫さまが天女(てんにょ)の様な羽衣を着た女たちを引き連れて座敷にやって来ました。
「贈り物をありがとうございます。お礼を差し上げますので、何でも欲しい物を言いなさい。もし望みの物がなければ、玉手箱(たまてばこ)などは、・・・」
(玉手箱なんて、とんでもない!)
 姉婿は、大きな声で言いました。
「ネコを一匹下さい!」
「まあ、ネコをくれですって?
 ネコは、竜宮に一匹しかいない宝物。
 ・・・でも、あなたの望みとあらば仕方ありません。
 いいですか。
 竜宮のネコは一日にアズキ一合を食べさせると、一升(いっしょう→一合の十倍で約一・八リットル)の小判を生みます。
 どうぞ、いつまでも可愛がって下さいね」
 乙姫さまはそう言って、可愛いネコを一匹くれました。
 姉婿はネコを抱いて、さっきの女の背中につかまりました。
 目をつむると気が遠くなり、目が覚めた時には元の海辺に立っていて、一匹のネコを抱いていました。
 姉婿は大喜びで家に戻ると嫁さんに訳を話し、とっておきのアズキを一合食べさせました。
 するとネコのお尻から、
♪チャリーン
♪チャリーン
と、小判がドンドン飛び出して来て、見る見るうちに一升分ほどになりました。
 姉婿はその小判で大きな魚やら高価な着物を買い込み、それを持ってお百姓さんの家へと行きました。
「どうして、こんな高価なものを?」
 お百姓さんもおかみさんも飛び上がるほど喜び、姉婿に初めて酒やごちそうをふるまいました。
「それにしても、しばの束しか持って来られないお前が、どうやって金持ちになった?」
 二人が聞くので、姉婿は乙姫さまからネコをもらった事を正直に話しました。
「何と、竜宮のネコだって!」
 欲の深いおかみさんは、急にそのネコが欲しくなりました。
「なあ、すまんがわしらに、そのネコを貸してくれ」
 そう言って二人は、姉婿と一緒に家までついて来ます。
 姉婿も嫁さんも、仕方なく、
「それなら、ほんの二、三日だけですよ。それから一日に一合のアズキを、食わせるようにして下さい」
と、言って、ネコを渡しました。
(しめしめ、このネコさえいれば、大金持ちになれるぞ)
 二人は家に戻ると、さっそくアズキを一合食べさせようとしましたが、
(待てよ、一合で一升の小判を生むなら、五合食わせれば五升の小判を生むわけだ)
 そこで嫌がるネコに無理矢理五合のアズキを食べさせると、ネコはとっても臭いフンを山の様に出して、そのまま死んでしまいました。
「なんだ、なんだ。小判を生むなんて、とんでもない。山の様なフンなんかしやがって!」
 お百姓さんもおかみさんもカンカンに怒って、姉婿の家へ怒鳴り込んで来ました。
「よくも、わしらを騙したな」
「そんな。騙すなんて、とんでもない」
 姉婿は、すぐにお百姓さんの家へ行って、死んだネコをもらい受けて来ました。
「可愛そうに。どうか、かんべんしておくれ」
 姉婿はネコを庭に埋めて、毎日手を合わせました。
 すると二、三日して、ネコを埋めた所から南天(なんてん→メギ科の常緑低木)の木が生えてきて、見る見る大きくなり、たくさんの実をつけました。
 姉婿はそれを見ると、可愛かったネコの目を思い出して、思わず木をゆさぶってみました。
 すると南天がバラバラこぼれて、何と黄金に変わったのです。
 黄金のおかげで姉婿は大金持ちになり、姉娘は三人の姉妹の中で一番幸せ一生を送ったという事です。

おしまい

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