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1月10日の日本の昔話

若様はひとり

若様はひとり

 むかしむかし、彦一(ひこいち)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 となり近所の町や村にまで、利口(りこう)な子どもの話しが広がり、とうとううわさは、お城の殿さまの耳にまで入りました。
「そんなに利口なら、ひとつとんちの力試しをしてやろう」
と、彦一をお城に呼んだのです。
 彦一は大広間に呼ばれて、かしこまっていると、
「そちがちまたで評判の彦一じゃな。くるしゅうない、面(おもて→顔)を上げい。・・・ほほう、利発(りはつ→かしこそう)な顔をしておるな。ところで余にも、おまえくらいの若がひとりおる。そのほう、これからは若の遊び相手をしてやってくれ」
 殿さまはこう言ったあと、けらいの者に若さまを呼びに行かせました。
 やがてふすまが開いて、一人、二人、三人、四人、五人と、同じ着物を着た子どもがぞろぞろと入ってきました。
 着物だけではありません。
 五人とも、兄弟のように顔がよくにています。
「どうじゃ、おまえに本当の若が当てられるか? さあ、うわさに聞く知恵でさがし当てたら、ほうびをつかわすぞ」
 まわりにいたけらいでさえ、若さまを当てる自信がありません。
 それを、若さまを見たことのない子どもが、見ただけでわかるはずがないと、殿さまは得意顔(とくいがお)です。
「さあ、どうした。無理なら無理と、正直にいうがよい」
 ところが彦一は、ニコニコしながら言いました。
「どの子も同じように見えますが、本物の若さまは、おらにはちゃんとわかるだ。本物の若さまは手ならいのあととみえて、手に墨(すみ)がついとります」
 この言葉につられて、本物の若さまは自分の手を見て、他の子どもはそれをのぞきこみました。
 ところが、どこをさがしても、墨はついていません。
「ほれ、その方が若さまです」
 彦一のかしこさに、殿さまはすっかり感心して、
「これはまいった。ほうびを持ってまいれ」
 彦一は、山のようなほうびをもらうことができました。

おしまい

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