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ふくむすめどうわしゅう(福娘童話集) >にほんむかしばなし(日本民间故事) >一月

ぼたんの花と若者

牡丹の花と若者
牡丹花和年轻人


(石川県の民話)
(石川县的民间故事)

翻訳者 信陽師範学院  許秋月

にほんご(日语)  ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文

 むかしむかし、能登の国(のとのくに→石川県)に、一人の若い百姓がいました。
 很久以前,有一个能登国(石川县)的年轻老农民。

 若者は子どもの頃から木や花が好きで、よく山へ行っては珍しい草や花を取って来て庭のすみに植えたり、鉢で育てたりして大事にしていました。
 年青人打小就喜爱花草树木,常去山上挖来珍贵的花草种在庭院的角落里或是栽在花盆里精心地养护。

 この若者が住む村境に深見山(ふかみやま)といって、一段と高い山があります。
 年轻人所住的村子边界处有座很高的山叫深见山。


  さて、ある暑い夏の日の事。
 事情发生在某个炎热的夏天。

 若者が深見山を歩いていると、どこからともなく良い香りが漂ってきました。
 年轻人正在深山里走着,这时不知从何处飘来了一股沁人心脾的香味。

 甘い様な、酸っぱい様な、それでいてどこか懐かしい、とても不思議な花の香りです。
 总觉得是让人怀念又很不可思议的甜甜的、酸酸的花香气。

 花の事なら何でも知っている若者でしたが、この香りをかいだのは今日が初めてです。
 对于花无所不知的年轻人,却是初次闻到这种花香。

(いったい、何の花だろう?)
(这到底是什么花呢?)

 若者は香りをたよりに、山の奥へ奥へと歩いて行きました。
 年轻人随着花香一步一步地走向深山里。

 しばらくして辺りを見回すと、尾根一つ越えた向こうの山に、薄紅色の花畑がありました。
 他环视了一会儿四周,看到在越过一座山岭的对面山上,有一块粉红色的花田。

 さっそく尾根づたいに、若者は花の方へと近づいて行きました。
 年轻人马上顺着山脊朝花的方向走近。

 めったに人の入らない道もない山奥を進み、もう少しという所で若者は思わず足を止めました。
 在几乎没有人来的、连路都没有的深山里前行,在山的附近年轻人不禁停下了脚步。

 そこはちょうど馬の背中の様に、右を見ても左を見ても切り立った岩山です。
 那是一座有点像马背样子的、左右两边都峭立的岩石山。

 それでも若者は花を見たい一心で岩角を掴み、木の 根につかまって高い崖の上をはう様にして渡って行きました。
 即便如此,年轻人一心想看到花,所以就抓着岩石角、树根攀爬高高的山崖过去的。

 何とか渡り終わると、そこは目の覚める様な一面のお花畑です。
 总算越过去了,那是一片美丽如画的花田。

 見た事もない大きな牡丹(ぼたん)の花が、いっせいに咲ききそっていました。
 从未见过的大牡丹花一同竞相绽放。

「ああ、こんな山の中に、こんなに美しい牡丹の花があるとは。それにしても、もう季節もはずれているのに」
“啊!虽然已经过了花季,但在这山,里居然还有这么美丽的牡丹花”

 どう考えても不思議ですが、でも花の大好きな若者は夢の中へ誘い込まれる様な香りに胸を踊らせて、しげしげと花に見とれていました。
 再怎么想都觉得不可思议,但是痴迷于花的年轻人,因花香而满心欢喜,像是被诱入梦中似的目不转睛地呆望着那花。

 たくさんの花の中でも、特別あざやかな花を咲かせた大牡丹が、ひときわ若者の目を引きつけました。
 在盛开的花丛中,有一朵开的特艳丽的大牡丹花,引起了年轻人的格外注目。

「ああ、何と美しいのだろう。こんな花を家の庭に咲かす事が出来たら」と、思わず、つぶやいた時です。
 年轻人不禁自言自语道:“啊!真美啊!家里的庭院里要是能开有这样的花的话…..”。

 突然花のかげから、一人の乙女(おとめ)が現れました。
 这时,忽然从花后面走出来一位少女。

 まるで天女の様な、美しい乙女です。
 是一位美若天仙的少女。

(こんな所に人がいるとは。まさか天女?)
(在这种地方居然有人,莫非是仙女?)

 不思議に思いながらも、若者はその乙女を見つめていました。
 觉得不可思议的年轻人盯着少女。

 乙女は何の音も立てずに若者のそばへ近よって来ると、にっこりと笑って言いました。
 悄无声息地靠近年轻人的少女莞尔一笑说道

「その花を一枝、わたしに折って下さいな」
“能为我折下那枝花吗”

 その声があまりにも綺麗だったので、若者はびっくりしました。
 少女那极悦耳的声音让年轻人受宠若惊。

「どうか、その花を一枝、わたしに折って下さいな」
“能请你为我折下那枝花吗?”

 乙女は大きな美しい牡丹の花を指さして、また言いました。
 少女指着那朵又大又漂亮的牡丹花又说道。

「はっ、はい。しかしここは、わたしの花畑ではありません。どの花も、勝手に折るわけにはいきません」
“可、可以,可是,这不是我的花田,不能随便折别人的花”

「いいのですよ。ここは、わたしたちの花畑です。その花は、わたしなのです。どうか、あなたのお手で。・・・あなたのお手で、折って下さい」
“可以的,这是我们的花田,那朵花是我的,一定要用您的手…..用您的手为我折下来”

 その声は前と違って、とても寂しそうです。
 那声音不同与刚才,听起来好像很寂寞。

(自分の言葉が、乙女の心を傷つけたのかもしれぬ)
(觉得自己的话可能伤了少女的心)

 若者はそう思って、指差された花の一枝を折り取って、女の手に渡しました。
 年轻人如此想着便折下了少女所指的那枝花并递给她。

 その途端、若者は気を失って、ばったりと倒れてしまったのです。
 正在那时,年轻人失去了知觉,叭的一声倒在了地上。


 さて、それからどのくらい時がたったのでしょうか、どこか遠くの方で、誰かが呼んでいます。
 后来,从那之后大约过了一会儿,总觉得有人在远处呼喊。

 目を開けてみると、若者は一人の老人に介抱されていました。
 年轻人就睁开了眼睛,一位老人正在照看着他。

「おお、お気がつかれましたか」
“噢!你醒了吗?”

 老人は、ここへたきぎを取りに来て、死んだ様に倒れている若者を見つけたのです。
 老人来这儿取柴火,发现了已昏倒的年轻人。

「お前さんは、あの高い崖から落ちなさったんだね。それにしても、よく大した怪我もせんで」
“你呀,从那么高的山崖上掉下来啦!即便如此却没有受重伤”

 老人は若者を助け起こすと、若者を背に背負って山を下って行きました。
 老人扶起年轻人背着他下山去了。

 その後ろ姿を、高い崖の上から大きな牡丹の花が静かに見送っています。
 高崖上的大牡丹花目送着他们离去的背影。

 その花には、朝露が乙女の涙の様に光っていました。
 那朵花上却闪着似朝露般晶莹剔透的少女的眼泪。

 そして若者が家に帰ってみると、不思議な事に山で見たあの大牡丹の花が、前庭に咲いていたのです。
 接着,不可思议的是,年轻人一回到家就看见了,在前面的庭院里盛开着,山里的那朵大牡丹花。

「・・・これは」
“…..这是”

 不思議な事に花はそれから何年も何年も、いつも変わらない美しい姿で咲き続けました。
 奇怪的是,那朵花从那以后,年复一年,依然美丽地绽放着。

「この牡丹が、あの美しい乙女だったのか」
“难道这朵牡丹花就是那位美丽的少女吗?”

 若者はその牡丹の花をとても大切にして、一生妻をめとらなかったという事です。
 年轻人因为很爱惜那朵牡丹花所以一生未娶。

おしまい
完结

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