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6月12日の日本の昔話
ふたりになった孫
變兩個孫子
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、ある村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
頭擺頭擺,一個老阿公摎一個老阿婆戴在某隻村莊。
おじいさんとおばあさんには、一人の可愛い孫がいます。
老阿公摎老阿婆有一個得人惜个孫仔。
ところが家が貧乏なので、孫を二里(八キロメートル)ほどはなれた漁師の網元(あみもと→多くの漁師をやとっている、漁師の親方)の家へ奉公(ほうこう→住み込みで働くこと)に出すことになりました。
毋過,因為屋下窮苦,孫仔去離屋下兩里(8公里)遠个漁夫大頭家(網元,請當多漁夫个漁夫大頭家)做長工。
しかし孫は、奉公に行ったその晩に帰って来て、
毋過,孫仔去做長工當日暗晡斯倒轉來,講:
「じいさま、おばあさん。
「阿公,阿婆。
おら、網元の家じゃあ、骨がおれてどうにもなんねえ。
𠊎在漁夫大頭家(網元)个屋下,恁艱苦,無論仰般做毋下去。
おら、あそこへ奉公するのはいやだ」
と、言うのです。
𠊎,無想在該做。」
おじいさんとおばあさんは、すっかり困って言いました。
老阿公摎老阿婆當無結煞个講:。
「これ。ただこねるもんでねえ」
「這你毋使硬詏。」
「そうだ。何とかしんぼうして、がんばってくれ」
「係啦。愛忍耐、煞猛兜。」
そしてせんべいを食べさせたり、おみやげ持たせたりして、やっと帰したのですが、あくる日の晩になると、また戻ってきたのです。
過後,拿煎餅分佢食又拿等路分佢帶等,總算倒轉去,毋過第二日暗晡佢又轉來。
こうして孫は毎晩毎晩帰ってきては、おいしい物を食べて、おみやげを持って帰っていったのです。
恁樣,孫仔逐暗晡轉來,食好料,帶等等路走。
ある日の事。
有一日。
孫が休みをもらったと言って、珍しく昼間に現れました。
孫仔講佢請假,在寶貴个日時頭轉來。
そこでおばあさんは、孫に注意をしました。
所以,阿婆提醒厥孫仔。
「なあ、お前。
「噯,你。
そんなに家に帰ってばかりしては、網元さまに良く思われんよ。
無事長透走轉來,愛好好替漁夫大頭家(網元)想看阿仔。
つらいだろうが、もっとしんぼうせにゃ」
艱苦係無,較刻耐仔兜。」
すると孫は、不思議そうな顔をして言いました。
過後,孫仔表情當奇怪个講:
「じいさま、ばあさま。おら、網元さんに奉公してから、今日、初めて家に帰ってきたんだよ」
「阿公,阿婆。𠊎,去漁夫大頭家(網元)做長工以後,今晡日第一擺轉來哊。」
「初めて?何を言う。お前は毎晩の様に、帰ってくるでねえか」
「第一擺?你講麼个,你逐暗晡都轉來毋係嘎?」
「そうだ。そしてごちそうたらふく食べて、みやげまで持って帰るでねえか」
「係啊。食好料食到飽𩜰𩜰,又帶等路走毋係嘎?」
おじいさんとおばあさんの言葉に、孫はびっくりです。
孫仔聽到阿公,阿婆恁樣講嗄著驚。
「いんや、いんや、おら、帰って来るのは、今日が初めてだ」
「毋係,毋係,𠊎,轉屋下,今晡日係第一擺。」
「???」
「???」
孫がうそを言う子どもでないことは、おじいさんもおばあさんもよく知っています。
阿公,阿婆當了解,孫仔毋係會講花蓼个細人仔。
おじいさんもおばあさんも孫も、不思議そうに首をかしげました。
阿公,阿婆還過孫仔,三儕都感覺當奇怪,頭側側。
その夜、誰かが家の戸を叩きました。
該暗晡,毋知麼人來碰門。
おじいさんが戸口に行くと、
老阿公行過去門口後,
「おらだ。今帰ったぞ」
「係𠊎,這下轉來了。」
と、いつもの孫の声がします。
摎逐擺共樣,用孫仔个聲哨。
おじいさんがびっくりして家の中を見ると、孫はおばあさんと話しをしています。
老阿公感覺奇怪並向屋肚看,厥孫仔當當在該摎阿婆打嘴鼓。
「こりゃ、たまげた。孫が二人になったぞ。どっちが孫が、本物じゃろか?」
「這,嚇著人。𠊎个孫仔這下變兩個。哪個係正个呢?」
おじいさんは、ふと考えました。
老阿公忽然間想著。
(そう言えば、夜に来る孫は、すこしおかしなところがあった。すると外にいる孫は、化け物かもしれんぞ)
(照講,暗晡頭轉來个孫仔有點仔奇怪,在外背該個孫仔可能係妖怪。)
おじいさんは、そばにあった天びん棒(てんびんぼう→両端に荷物を引っかけて使う、荷物もちの棒)を持って、用心しながら戸を開けました。
老阿公擎等放在門脣个擔竿,細心細意去開門,
すると外の孫は、びっくりして言いました。
外背个孫仔著下驚,講:
「じいさま、じいさま。おらは、お前の孫だぞ。そないな物を持って、どうするんじゃ」
「阿公,阿公,𠊎,係若孫仔,擎該東西做麼个?」
「やかましい!わしの可愛い孫は昼間に来て、奥でばあさまと話をしとるわい!」
「吵死人!吾該得人惜个孫仔日時頭轉來,還在裡肚摎厥婆打嘴鼓!」
おじいさんが怒鳴ると、今まで孫の姿をしていたものがクルリととんぼ返りをして、一匹のタヌキになりました。
老阿公大聲咄,到這下還詐做厥孫仔个東西,轉身打隻觔斗,變一條狐狸。
そして手を合わせて、「じいさまや。かんにん、かんにん」と、あやまるのです。
過後,雙手合十講:「老阿公。請你包涵,請你包涵。」摎佢會失禮。
その様子を見たおじいさんは、すっかりタヌキの孫も可愛くなって、
看著該種情形个老阿公,狐狸變个孫仔乜變著當得人惜。
「よしよし。せっかく来たんじゃから、あがっていけ。ごちそうもあるから、たんと食べて行けや」
「好,好,專工來到了,落來,有息菜飯,來食兜仔。」
「ありがとう」
「承蒙你。」
タヌキは礼を言うと、またクルリととんぼ返りをして孫の姿になりました。
狐狸感謝佢後,又轉身打隻觔斗變轉厥孫仔。
そして、おじいさんとおばあさんと本当の孫とタヌキの孫は、みんな仲良く晩ご飯を食べたのでした。
老阿公摎老阿婆,正經个孫仔還過狐狸孫仔,感情當好共下食夜。
おしまい
煞咧
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