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福娘童話集 > きょうの江戸小話 > 6月の江戸小話 >泥棒のお手本
6月12日の小話
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泥棒のお手本
あるところに、泥棒の先生がいました。
この先生のところに、泥棒になりたいという男がやってきて、
「先生! ぜひ、手ほどきしてください」
と、頼みました。
「よしよし、それでは教えてやろう。そもそも泥棒というものは、人のすきをついてこっそり物を盗むものだ。そして盗む物は小物より、たんすの様な大物を盗む方が腕が良いとされている」
「なるほど」
「そして・・・」
先生が話しに夢中になっていると、裏口から泥棒が入ってきました。
泥棒は部屋にあったたんすをかつぐと、そのまま素早く逃げてしまいました。
「あの、先生。ただいま裏口から忍び込んだ泥棒が、部屋にあったたんすを盗んでいきましたが」
男に言われて、先生はたんすの方をふり返りました。
(しまった! まんまとやられたわ!)
すぐに泥棒を追いかけたいところでしたが、先生は男の手前、やせがまんしなければなりません。
先生は、落ち着きをはらって言いました。
「なあに、今日は泥棒のけいこ日で、あいつもおれの弟子の一人だ。お前さんも、あの男をお手本にがんばりなさい」
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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