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8月24日の日本の昔話
酒つぼのヘビ
酒桶个蛇
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、比叡山(ひえいざん)できびしい修行していた坊さんがいました。
頭擺頭擺,有一個在比叡山修行个和尚。
けれど、いくら修行を続けても大して偉くはなれない事がわかると、生まれ故郷の摂津の国(せっつのくに→大阪府)に帰ってきました。
但係,佢知著,毋管仰般修行,佢都毋會變偉大,所以斯轉去胞衣跡;攝津國(大阪府)。
そして坊さんはお嫁さんをもらって、幸せに暮らしていました。
過後討一個餔娘,過著幸福个生活。
この村では、毎年正月の修正会(しゅしょうえ→寺院で、正月元日から3日間あるいは7日間、国家の繁栄を祈る法会)には、必ずこの坊さんをたのんでおがんでもらうことにしていました。
這個村莊,逐年正月辦修正會(在廟寺辦理,從年初一開始三日無斯七日為祈求國家繁榮个法會。)時節,一定愛叩拜這個和尚。
さて、ある年の修正会の時、この坊さんは仏さまにお供えしたもちをたくさんもらいました。
有一年修正會時節,和尚收著當多敬奉佛祖个粢粑粄。
しかし坊さんとお嫁さんはとてもけちだったので、そのもちを誰にもわけてあげようとはしません。
但係,和尚兩公婆當齧察,毋肯摎粢粑粄送人。
自分の子どもたちにさえ、食べさせないのです。
連自家个細人仔都無好食。
二人は少しずつもちを食べていましたが、そのうちにもちは固くなってしまいました。
兩公婆一日斯食一點仔粢粑粄,因為食昶久粢粑粄變硬了。
このままでは、もちは食べられなくなってしまいます。
恁硬个粢粑粄,無法度食。
そこでお嫁さんは、こんな事を考えつきました。
所以,餔娘想著一隻辦法。
(そうだわ。この固くなったもちで、お酒をつくろう。きっと、おいしいお酒が出来るにちがいないわ)
(恁樣。用硬粄牯來焗酒。定著會焗出好食个酒。)
そこでさっそく、坊さんに話すと、
黏時走去摎和尚講,
「それは、なかなかの名案じゃ」
と、大賛成です。
「該係一隻當好个想法。」
非常贊同。
二人はたくさんのもちを酒つぼに入れて、酒をつくることにしました。
兩公婆摎大量个粢粑粄放落桶肚焗酒。
やがて、月日がたちました。
日仔過到盡遽。
「もうきっと、おいしいお酒が出来ているでしょう」
「應該美酒做出來了。」
ある晩、お嫁さんはこっそりと酒つぼのふたを開けてみました。
有一日暗晡,餔娘偷偷打開酒桶个蓋仔。
すると何かが、中で動いているように見えました。
裡背肚像有麼个東西在該停動樣。
「何かしら?」
「麼个東西?」
暗くてよく見えないので、お嫁さんは明かりをともしてつぼの中をてらしてみました。
因為暗疏疏,看毋清楚,所以餔娘點著燈盞火來照酒桶肚看清楚。
「あっ!」
「阿姆哀!」
お嫁さんの顔は、とたんにまっ青になりました。
餔娘个面黏時壢青。
つぼの中ではたくさんのヘビがかま首をあげながら、もつれあっているではありませんか。
酒桶裡肚有當多蛇,頭那擎高高像鐮仔樣,還纏做一下。
お嫁さんはつぼのふたをすると、逃げるように坊さんのところにかけていきました。
餔娘摎酒桶蓋仔弇轉去後,像逃命樣瀉去和尚該位。
「あなた、大変です。もちの酒つぼに、ヘビが」
「老猴牯,壞蹄了。粢粑粄酒桶裡肚有蛇。」
でも坊さんは、信じようとはしません。
但係和尚毋相信。
「何を馬鹿な。そんな事が、あるものか」
「正經係大戇嫲,敢有該種事?」
「でも、本当に見たのです」
「但係,𠊎真確實看著。」
「わかったわかった。なら、わしが見てきてやろう」
「了解,了解,恁樣形,𠊎來去看。」
坊さんはお嫁さんから明かりを受け取ると、酒つぼのところへいきました。
和尚在餔娘該接過燈盞火,斯去放酒桶該位。
そしてふたを取ると、つぼの中をのぞきこみました。
打開酒桶蓋,看向酒桶裡肚。
「わっ!」
「wa!」
坊さんもびっくりして、お嫁さんのところにかえってきました。
和尚也著驚,走轉餔娘該位。
「これはいかん。こうなれば、どこか遠くへつぼごと捨ててしまおう」
「該做毋得,若係變恁樣,愛摎佢㧒較遠兜。」
二人は酒つぼをかつぎ上げると、広い原っぱのまん中に捨ててしまいました。
兩公婆扛等酒桶,摎佢㧒大平原中央。
その、あくる日の夕方の事です。
過幾日臨暗仔。
広い原っぱの一本道を、三人の男が通りかかりました。
三個細倈仔經過大平原个路。
「おい、あれは何だろう?」
「噯,該係麼个?」
酒つぼを見つけた一人の男が、原っぱのまん中を指さして言いました。
發現酒桶个一個細倈仔,手比大平原中央,講:
「さあ、何だろうな。行ってみよう」
「這,到底係麼个哪?行過去看。」
三人は恐る恐る、酒つぼに近づきました。
三儕人驚驚忸忸行去酒桶該位。
そして一人の男が、つぼのふたをとって中をのぞきこみました。
其中一個細倈仔打開酒桶蓋,向酒桶裡肚看。
「おい、酒だ、酒だ!」
「噯,酒哦,係酒哦!」
「なに、本当か?」
「麼个,正經係無?」
他の二人も先を争うようにして、つぼをのぞきこみました。
另外兩儕相爭去看酒桶裡肚。
「確かに酒だ。しかし一体、どうしたことじゃ?」
「確實係酒,毋過,到底仰會恁樣?」
三人は思わず、顔を見合わせました。
三個細倈仔你看𠊎𠊎看你。
すると一番はじめに酒つぼをのぞいた男が、ニヤリと笑って言いました。
過後,最先探酒桶个細倈仔笑咪咪,講:
「この酒を飲もうと思うが、どうだね?」
「𠊎想啉這酒,仰般?」
二人の男は、恐ろしそうに言いました。
其他該兩儕人驚到會死,講:
「野原のまん中に、こんな酒つぼが捨ててあるというのは、どうもおかしい。なにかきっと、わけ
があるにちがいない。危ないから、飲むのはよせ」
「會摎這桶㧒到這大平原中央,實在還奇怪,定著有麼个原因。盡危險,所以這酒毋好啉。」
しかしこの男は大の酒好きだったので、
但係這個當好食酒細倈仔應講:
「なあに、酒が飲めるのなら、死んでもかまうものか」
「麼个啊!若係有酒好啉,死都甘願!」
と、腰につけた湯のみで酒をすくって、一気に飲み干しました。
就用掛在囊腰仔个杯仔去舀酒,做一口啉落去。
「うん、うまい! これは、けっこうな酒だ」
「m11,好食!這係當好个酒。」
そう言うと、もう一杯飲みました。
講煞,又啉一杯。
それを見ていた二人も酒好きですから、もう飲みたくてたまりません。
其他該兩儕看了後也想啉,想到忍毋核。
「仕方ない。わしらも、付き合ってやるか」
「無法度,𠊎兩儕陪你好無?」
三人は次から次へと、酒を飲み始めました。
三儕人開始一杯過一杯續等啉。
「おう、確かに良い酒だ」
「唉哦,確實係好酒。」
「本当にな。酒屋に行っても、これほどの酒はないぞ」
「正經,去酒店也無這恁好啉个酒。」
「おい、こうなったら、何も急いで飲むことはない。家に持って帰って、ゆっくりと飲みなおそうではないか」
「噯,係恁樣形,該酒毋使啉恁急,帶轉屋下慢慢啉無會較好嘎?」
そう言って三人は、その大きな酒つぼをかついで家に帰りました。
講煞,三儕人摎酒桶扛轉去。
さて、それから間もなく、
過無幾久,
「三人の男が、野原に捨てた酒つぼを見つけたそうだ。そして毎日のように飲んだが、とても良い酒だったそうだ」
と、いう話しが、村中に伝わりました。
村內斯傳出風聲講:「聽講三儕細來仔人,在大平原中央發現一隻人㧒忒个酒桶,所以差毋多逐日都啉酒樣,聽講係當好个酒。」
それを聞いた坊さんとお嫁さんは、
聽著這風聲个和尚兩公婆
(あれはやっぱり、ヘビではなかったのだ。人にもやらず自分たちの物にしてしまったので、仏さまのばつをうけて、わたしたちの目にだけヘビに見えたのだ)
(該定著毋係蛇,因為圖食毋肯摎人分享,所以分佛祖責罰,在俚目珠肚正會看做蛇。)
と、反省して、それからはもらい物があると必ず人に分けてやるようになったのです。
恁樣反省,自該擺以後,有得著東西時節,定著會兜別人摎人分享。
おしまい
煞咧
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