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10月15日の日本の昔話
ふるやのもり
舊屋漏水
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、雨の降る暗い晩の事、おじいさんが子どもたちに話を聞かせていました。
頭擺頭擺,有一隻落水个暗晡,老阿公講古分一群細人仔聽。
「じいさま、一番こわいもの、なんだ?」
「老阿公,一等得人驚个東西係麼个?」
「・・・そうだの、人間ならば、どろぼうが一番こわい」
「‧‧‧麼个哪?若係人,該就係賊仔最得人驚。」
ちょうどその時、どろぼうがウマ小屋のウマを盗もうと屋根裏にひそんでいました。
堵堵該當時有個賊仔想愛偷馬寮肚个馬,囥在棚頂。
どろぼうは、これを聞いてニヤリ。
賊仔聽到佢恁樣講,在該偷笑。
(ほほう。このおれさまが、一番こわいだと)
(ho ho 𠊎係等得人驚个東西。)
「じいさま、けもので一番こわいもの、なんだ?」
「老阿公,獸類一等得人驚个東西係麼个?」
「けものならば、・・・オオカミだの」
「若係獸類,‧‧‧就係狼。」
「じゃあ、オオカミよりこわいもの、なんだ?」
「該,比狼還較得人驚个東西係麼个?」
「そりゃ、ふるやのもりだ」
「該就係舊屋漏水。」
ウマを食べようとウマ小屋にひそんでいたオオカミは、それを聞いておどろきました。
為著愛食馬,囥在馬寮肚个狼,聽著嗄著驚。
ふるやのもりとは、古い屋根からポツリポツリともる雨もりの事です。
舊屋漏水係對屋頂,水汀汀汀汀滴下來。
だけどオオカミは、そんな事とは知りません。
毋過狼對舊屋漏水係麼个,完全無了解。
「おらよりこわいふるやのもりとは、いったいどんな化物だ?」
と、ガタガタふるえ出しました。
「比𠊎這條狼還較得人驚个東西,到底係麼个妖怪?」
驚到吃吃惇。
屋根裏のどろぼうも話を聞いて、ヒザがガクガクふるえています。
棚頂个賊仔乜聽著,兩隻腳膝頭緊掣。
「ふるやのもりというのは、どんな化物だ?」
「舊屋漏水到底係麼个妖怪?」
と、ビクビクのところへ、ヒヤリとした雨もり(→ふるやのもり)が首にポタリと落ちました。
佢當當掣个時節,該像冰恁冷个水滴到頭那頂。
「ヒェーーッ!で、でたあー!」
「阿姆哀,來,來了!」
どろぼうは足をふみはずして、オオカミの上にドシン!
賊仔漯著跢下去,〝碰〞聲矺著狼。
「ギャーーッ!ふ、ふるやのもりだっ!」
「阿姆哀,敢係舊屋漏水!」
オオカミはドシンドシンと、あちこちぶつかりながら、ウマ小屋から飛び出しました。
狼跢下去以後,東撞西撞包尾瀉出馬寮。
振り落とされてはたいへんと、どろぼうは必死にオオカミにしがみつき、オオカミは振り落とそうとメチャクチャに走り続けます。
若係分佢奮走就無結煞,所以賊仔抓等狼抓到核核,狼想愛奮㪐來所以亂撞。
夜明けごろ、うまいぐあいに突き出ている木の枝を見つけたどろぼうは、
臨天光,賊仔當好運,看著一枝探出來个樹椏仔。
「とりゃー!」
と、飛びついて、そのまま高い枝にかくれてしまいました。
「咻!」
聲,晃過來,晃到一枝高高个樹椏仔囥起來。
「たっ、助かった」
「有、有救了!」
オオカミの方は背中にくっついていた物がとれて、ホッとひといき。
狼該片因為背囊頂个東西拿忒了,輕鬆多了。
「だが、まだ安心はできん。ふるやのもりは、きっとどこかにかくれているはず。友だちの強いトラに退治(たいじ)してもらおう」
と、トラのところへ出かけました。
「毋過,還做毋得安心,舊屋漏水定著還囥在哪位,來去請老虎朋友來收拾佢。」
講煞就行去老虎該位。
話を聞いてトラも恐ろしくなりましたが、いつもいばっているオオカミの前でそんな事は言えません。
聽著這種事乜驚到會死,毋過平時在狼面前當沙鼻个老虎,做毋得講出來。
「ふるやのもりという化け物、必ずわしが退治してやる。安心せい」
「舊屋漏水這妖怪,一定愛收忒佢,大家正會安心。」
トラとオオカミは一緒に、ふるやのもりを探しに出かけました。
老虎摎狼共下出去尋舊屋漏水。
すると高い木のてっペんに、なにやらしがみついています。
堵好在高高个樹尾頂有一隻麼个東西。
オオカミはそれを見て、ガタガタとふるえ出しました。
狼看著,開始顫。
「あ、あれだ。あ、あれが、ふるやのもりだ」
「該,該係,該就係舊屋漏水。」
「なに、あれがそうか。なるほど、恐ろしい顔つきをしておるわい」
「麼个,該係無?有影,面還得人驚哪。」
トラは、こわいのをガマンして、
老虎忍等詐意毋驚,
「ウォーッ!ウォーッ!」
と、ほえながら木をゆさぶりました。
「嘸!嘸!」緊吠緊搖樹仔。
するとどろぼうが、二匹の上にドシン!と落ちてきました。
所以賊仔就對頂高跌下來矺著該兩條。
「キャーン!」
「kiang!」
「ニャーン!」
「niang!」
トラとオオカミはなさけない悲鳴をあげながら、逃げて行きました。
老虎摎狼當衰過緊叫緊逃走。
どろぼうは地面に腰を打ちつけて大けがをし、オオカミは遠い山奥に逃げ、そしてトラは海を渡って遠い国まで逃げて行って二度と帰ってはきませんでした。
賊仔跌到地泥下,腰骨傷到當嚴重,狼走去遠遠个深山肚,老虎渡過海,走去當遠个國家無再過倒轉來。
おしまい
煞咧
註: 昔話に出てくるオオカミは日本オオカミの事で、本州・四国・九州に分布していた小形のオオカミです。
註:民間故事裡肚个狼係講日本个狼。分布在本州、九州、四國細形个狼。
頭胴長1メートル、尾長30センチメートルほどで、1905年(明治38)奈良県での記録を最後に、生存は確認されていません。
頭那身長1公尺左右,尾長差毋多30公分,係1905年〈明治38〉最後在奈良縣个記錄、係毋係確實存在吂有經過確實認定。
たんに、ヤマイヌと呼ばれることもあり、犬と日本オオカミの区別は、なかなかつかないそうです。
乜有人講係野狗,狗摎日本个狼个差別盡難分清楚。
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