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11月26日の日本の昔話

灰まき童子

灰まき童子
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、あがり長者とよばれる屋敷と、いり長者とよばれる屋敷がありました。
 でも、いり長者はあがり長者にだまされて、屋敷に住むお母さんと十五歳の息子は毎日の食べる物にも困る貧乏になっていました。

 ある夜、いり長者の息子はあがり長者の屋敷へ、お米とみそを借りに行きました。
 でも、あがり長者は
「貧乏人のくせに、米とみそを食うつもりか? ほしけりゃ、庭のもみがらでも持って行け」
と、意地悪を言って戸を閉めてしまいました。
 いり長者の息子がその事をお母さんに話すと、お母さんは芭蕉布(ばしょうふ→沖縄および奄美諸島の特産で、芭蕉の繊維で織った布)を差し出して言いました。
「それなら、この芭蕉布を売って、お米とみそを買っておいで。最後の一枚だけれど、仕方がありません」
 息子はうなずいて、町へ売りに出かけました。
 ところが途中の道で子どもたちがネズミをいじめているのを見かけると、息子は思わず声をかけました。
「この芭蕉布をやるから、ネズミを逃がしておやり」
 子どもたちは、芭蕉布とネズミを喜んで交換しました。
 息子はネズミをふところに入れて家に帰り、お母さんに話しました。
「そう。それは、仕方ありませんね」
 お母さんは少しだけ残っていたアワで、おかゆをたきました。
 すると、ふところのネズミがすっと屋敷を出て外へ行き、どこからか財布(さいふ)をくわえてもどって来ました。
「おやまあ、ネズミの恩返しですね」
 お母さんと息子は財布をご先祖さまにお供えして、にっこり笑って眠りました。

 その夜、お母さんはこんな夢を見ました。
 ネズミがきちんと座って、こう言うのです。
「わたしは息子さんに、命を助けてもらいました。
 先ほどの財布は、ご恩返しです。
 でもわたしの気持ちは、あれだけではすみません。
 あの財布に入っているお金で、まだらの三つある犬を買って育ててください」

 翌朝、お母さんは息子に夢の話をして町へ行き、まだらの三つある犬を探して買って帰りました。
 犬はとても元気がよくて、あまりご飯を食べさせなくてもすぐに大きくなりました。
 そして山へ行って、自分よりも大きなイノシシをつかまえて来るようになったのです。
 親子はそのイノシシを売って、少しだけお金持ちになりました。

 そんなある日、あがり長者がやって来てたずねました。
「お前たち、ついこの前まで米もみそもない暮らしをしておったのに、なんで金持ちになったのじゃ?」
 お母さんと息子は、これまでの事を話しました。
「なるほど、それならおれにも、その犬を貸してくれ」
 欲張りのあがり長者は、むりやり犬を連れて帰りました。
 お母さんも息子も、あがり長者がすぐに犬を返してくれるだろうと思っていました。
 でも三日たっても、犬はもどってきません。
 二人は心配になってあがり長者の屋敷へ行くと、あがり長者が言いました。
「あの犬はひどい犬で、死んだブタやらくさったネコの死体やらを運んできたんじゃ。だから殺して、こえだめに捨てた」
 お母さんと息子はこえだめから犬を抱きあげると、泣きながら自分の家の庭に埋めました。

 それから何日かすると、そこから竹の子が出て来ました。
「お母さん、見てください」
 息子がお母さんを呼びに行くと、竹の子はグングン天にむかって伸び続けています。
 そして竹の子は、なんと天の国の米倉を突き刺したのです。
 天の国のお米が、ザザザーッと雨の様に降ってきました。
「おやまあ、米の雨だわ!」
 お母さんと息子は、喜んでその米をひろい集めました。
 それから二人はそのお米を売って、ますますお金持ちになりました。

 しばらくして、あがり長者がやって来ました。
 のんびり暮らす二人を見て、あがり長者がたずねます。
「犬がいなくなったのに、お前たちはなんでこんな良い暮らしをしとるんじゃ?」
 お母さんと息子は、天から降って来たお米の話をしました。
 するとあがり長者は、犬を埋めたところを掘り返して、
「二、三日かりるぞ」
と、犬の骨を残らず持って帰りました。
 ところが三日たってもあがり長者が犬の骨を返しに来ないので、二人はあがり長者の屋敷に出かけて行きました。
 するとあがり長者は、今にも飛びかかって来そうな勢いで怒鳴りました。
「お前たちの言うように、確かに竹の子が出て天を突き破った。
 だが突き破ったところは、天の国の便所じゃ。
 おかげで屋敷中に汚い物が降って来て、えらい目に合ったぞ!
 だからあんな骨、浜の大岩のそばで焼いてやったわい!」
 お母さんと息子は浜辺の大岩へ走って行き、焼かれた骨を大事に包んで帰りました。
「どこか美しいところに、まいてやりましょう」

 次の日、二人は山へ出かけました。
 山の奥へ入っていくと、しげみからいきなり大きなイノシシが五頭も飛び出して来ました。
 息子は骨を焼いた灰をつかむと、
「お前は、元は強くて立派な犬だったぞ。あのイノシシたちを、やっつけてくれ!」
と、イノシシに灰を投げつけました。
 すると灰がイノシシの目に飛び込んで、イノシシの目をつぶしたのです。
 目が見えなくなったイノシシは、お互いに頭をぶつけてけんかになりました。
 そして一頭のイノシシが死んで、残りの四頭はどこかへ逃げてしまいました。
「お母さん、イノシシなべを食べて、元気を出しましょう」
 二人がなべをつついていると、あがり長者がやって来ました。
「お前たちは、犬の骨を灰にしてやったというのに、なんでイノシシなど食べれるのじゃ?」
 お母さんと息子は、山の中での出来事を話してきかせました。
 するとあがり長者は、残った灰を全部持って帰りました。

 翌日、あがり長者は灰を持って、山へ出かけました。
 すると草のしげみから、四頭のイノシシが出てきました。
 あがり長者は灰をにぎって、四頭のイノシシめがけて投げつけました。
「お前は、元は強くて立派な犬じゃったぞ」
 でも灰は風に流されて、どこかへ消えてしまいました。
 それを見たイノシシたちは、人間の声で言いました。
「こいつが昨日、仲間の目をつぶしてけんかさせた悪い人間だ! 殺してしまえ!」
「うわあー!」
 あがり長者は四頭のイノシシにおそわれて、二度と帰ってこなかったそうです。

おしまい

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