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12月9日の日本の昔話

タヌキの手習い

タヌキの手習い

 むかしむかし、ある寺に、源哲(げんてつ)という、和尚(おしょう)がやってきました。
 村の人たちは、新しい和尚さんにあいさつしようと、畑仕事を終えると寺にやってきました。
「こんばんは、和尚さん。・・・?」
「はて? どこにも、おらんようじゃが」
と、いいながら和尚をさがすと、なんと源哲和尚は、お堂の屋根の上で酒をのんでいました。
 これには、村の人たちはすっかりあきれて、
「ぼうずのくせに、昼間から酒をのんでござる。ちいと、かわっとるとちがうか、あの和尚」
「ちいとどころじゃねえ。あんなやつ相手にしとれんわい。けえろうや」
と、みんな帰ってしまいました。
 村の人たちからは相手にされなくなった源哲ですが、うら山にすむ子ダヌキたちには、すっかり気に入られてしまいました。
「おもしろそうな和尚さんだで、遊んでくれるかもしれん」
と、子ダヌキたちは、人間の子どもにばけて、源哲の前に出ていきました。
「和尚さん、なにしよるんじゃあ。おらたちもなかまに入れてくだせえ」
 子どもずきの源哲は、ニッコリして、
「いいとも、いいとも。それじゃあ、読み書きを教えてやろう」
と、それはいっしょうけんめいに、子ダヌキたちに教えてやりました。
 子ダヌキたちは、大よろこびです。
「和尚さん、お月さまって、どう書くんじゃ?」
「おらにも、教えてくれろ」
 そのうちに子ダヌキたちは、たいそう読み書きが上手になりました。
 源哲と子ダヌキたちが、たのしそうにしているのを見た村の子どもたちが、なかまに入れてほしいとやってきました。
「えんりょはいらんぞ。なかまは多いほどはげみになるでのう」
 こうして村の子どもたちもいっしょに、手習い(てならい→お勉強)をするようになったのです。
 そんなある日のこと、村の子どもたちは、近くの川でとった魚を源哲にさしだしました。
「おらたちにゃ、これくれえしか礼ができねえんだが、酒のさかなにしてくれろ」
 その日の帰り道、子ダヌキたちは、集まって相談しました。
「気がつかなんだのう。こんなにいろいろ教えてもろうたのに、なんのお礼もしなかったな」
「そうだとも、おんは返さんとな」
「そういえば、和尚さんは、雨の日に酒を買いにいくのが、なんぎじゃというとられたぞ」
 それからというもの、子ダヌキたちは人間の子どもにばけて、雨の日の夕ぐれにはかならず酒屋まで酒を買いにいき、源哲にとどけるようになりました。
 ところが酒屋の主人が、酒を買いにくる子どもたちのようすが、どうもおかしいと思っていました。
「きっと、あの子どもたちはタヌキにちがいない。きょうこそは、しっぽをつかんでやる」
 そうとは知らない子ダヌキたちは、いつものように、光る石で作ったお金を持って、酒を買いにきました。
 ところが酒屋の主人が、いきなり戸をバタン! としめたので、ビックリした子ダヌキたちは、しっぽをひょっこりだしてしまいました。
「やっぱり、おまえらはタヌキじゃったんだな。このいたずらダヌキめ!」
 酒屋の主人に、ひどいめにあわされてからは、子ダヌキたちは、二度と人里にすがたをあらわさなくなったそうです。
「あの子たちがタヌキじゃったとは。わしをよろこばそうとしたために、かわいそうなことをした」
 源哲はかなしみました。
 でも、このことで村の人たちも、ようやく源哲のやさしい人がらを知るようになり、親しくいききするようになったそうです。

おしまい

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