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      12月29日の日本の昔話 
          
          
         
  火正月 
  正月火 
   
  福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11) 
       
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      投稿者 「ちょこもち」  ちょこもち 
      
      
      むかしむかし、ある大晦日の夕暮れ、村の金持ちの屋敷に空海(くうかい)という名の旅のお坊さんがたずねてきて一夜の宿(やど)をたのみました。 
          頭擺頭擺,某年三十个臨暗仔,有名个行腳僧空海來到莊內有錢人大座屋,要求過夜。  
       
        屋敷の主人は、お坊さんの身なりを見て、 
          大座屋主人,看一下和尚个打扮,講︰  
       
        「明日は、めでたい正月だ。きたない者に、貸す部屋はないわい!出て行け!」 
          「天光日係快樂个新年,無間房好租分恁屙糟个人,出去!。」  
       
        金持ちの屋敷を追われたお坊さんは、今度はとなりのあばら家に声をかけました。 
          分人逐出有錢人大座屋个和尚,這下對就近荒忒个屋喊。  
       
        すると、あばら屋に住んでいるおじいさんが言いました。 
          過後,戴在荒忒該屋个老阿公講︰  
       
        「わたしたちは貧乏(びんぼう)で、年越しの食ベ物は何もありません。あたたかい火だけがごちそうの『火正月(かしょうがつ)』でよかったら、どうぞ入ってください」 
          「𠊎窮苦人,過年連愛食个東西都無,斯有燒暖个『正月火』這出菜,若係無棄嫌請落來。」  
       
        いろりには、あたたかそうな火が燃えていました。 
          地爐肚有燒暖个火著等。  
       
        お坊さんは、家にあがりこむと、 
          和尚師父就行落屋去。  
       
        「食べ物なら、心配はいらん」 
          と、言って、背負っていた袋から何やら取り出して、お湯のわきたつなべの中に入れました。 
          「食个東西無使愁。」講煞,就在背等个袋仔拿出毋知麼个東西,放落煮滾个鑊肚。  
       
        するとグツグツグツと、香ばしい香りがします。 
          過後gutsugutsu,香噴噴个香味走出來。  
       
        なべのふたを取ると、おいしそうなぞうすいがなべいっぱいに煮(に)えていたのです。 
          打開鑊蓋,在鑊肚煮了一大鑊糜。  
       
        その夜、おじいさんたちは久しぶりにいい年越しが出来ました。 
          該暗晡,老阿公屋下人盡久以來過恁好个年。  
       
        お正月の朝、お坊さんはわらじをはきながら、 
          年初一朝晨,和尚師父一頭著禾稈鞋一頭講︰  
       
        「お礼をしたいが、何か欲しい物があるかね?」 
          と、二人に聞くと、 
          「想愛送你禮物,毋知你想愛麼个東西無?」  
       
        「何もいりませんよ。ただ出来る事なら、むかしの十七、八に若返りたいものですね」 
          「麼个都毋使,若係做得,摎𠊎變轉頭過个十七、八歲。」  
       
        「おう、そうか、そうか。なら、わしがたったあと、井戸(いど)の若水(わかみず→元日の朝に初めてくむ水)をわかしてあびなさい」 
          「哦,係無?該恁樣,𠊎離開以後,去井擐兜回春水(回春水→年初一無斯立春朝晨第一擺擐个水)轉來,暖來洗身腳。」  
       
        二人がお坊さんに言われた通りにすると、不思議な事におじいさんとおばあさんは十七、八才の青年と乙女に若返ったのです。 
          兩儕照和尚師父講个做,盡奇怪老阿公、老阿婆變轉十七、八歲个後生條,仙女。  
       
        その話を聞いた金持ちは、遠くまで行っていたお坊さんを追いかけていって、 
          聽著該話个有錢人,去追走盡遠去了个和尚師父。  
       
        「お待ち下さい。こちらに、よい部屋があります。ごちそうもあります。上等のふとんもあります。ささっ、どうぞ、どうぞ」 
          「請等一下,這位有好个間房,又乜有好食个料理,當好个被,請。」  
       
        と、むりやり屋敷に連れ込むと、お坊さんに寝る時間も与えずに、 
          硬硬摎佢拉落去,連和尚師父睡目个時間都無分佢。  
       
        「わしらも、若返らせてください!」 
          と、手を合わせました。 
          「請你乜摎𠊎兜變後生。」  
       
        お坊さんは、眠い目をこすりながら、 
          和尚師父緊擂目珠緊講︰  
       
        「みんな勝手に湯をわかして、あびろ!」 
          「大家儘採暖兜水來洗身腳就好!」  
       
        その声を待っていたとばかりに、家中の者がわれ先にとお風呂に入りました。 
          等和尚師父講出這句話後,屋下人爭先恐後搶等落洗身間。  
       
        するとみんな若返るどころか、全身が毛だらけのサルになってしまったのです。 
          過後,大家都變後生,還變完身生毛个猴仔。  
       
        「ウキー!」 
          「ugiー!」  
       
        サルになった屋敷のみんなは、山に走っていってしまいました。 
          變猴仔个完屋人,走上山頂。  
       
        そこでお坊さんは、若返った二人を屋敷に呼び寄せて、 
          所以和尚師父喊變後生个兩儕人過來大座屋。  
       
        「サルたちには、この家は無用(むよう→必要ないこと)じゃ。今日からは、お前たちが住むがよい」 
          「該兜猴仔無必要戴這屋了,今晡日開始,你兩儕在這戴就好。」  
       
        と、言って、また旅立って行ったのです。 
          講煞,又去行腳了。  
       
        その日から二人は金持ちの屋敷で暮らすようになりましたが、困った事に屋敷には毎日のようにサルが入り込んできて、 
          該日開始,兩儕戴有錢人屋下過生活,毋過,盡無結煞,猴仔逐日會走落屋肚。  
       
        「わしの家、返せ!キッ、キッ、キー!」 
          と、さわぐのです。 
          「𠊎个屋還𠊎!ki ki ki!」  
       
        人のよい夫婦はサルが屋敷の元の持ち主であるだけに、気の毒やら気持ち悪いやらで、夜もおちおちねむれませんでした。 
          人當好心个兩公婆,斯因為猴仔係原旦个主人,認為當衰過心情毋好,暗晡頭睡毋落覺。  
       
        そんなある夜、二人の夢まくらにあのお坊さんが現れて、こう教えてくれました。 
          有一暗晡,和尚師父來到兩公婆枕頭脣,教佢恁樣做。  
       
        「サルがすわる庭石を、熱く焼いておきなされ」 
          「庭院肚猴仔坐个石牯舞燒來。」  
       
        そして次の日。 
          第二日,  
       
        そうとは知らないサルが、いつものように庭石にペタンとお尻をおろすと、 
          完全毋知个猴仔摎往常共樣,坐落石牯、  
       
        「・・・ウキー!キッキー!」 
          「・・・ugiー!ugiー!」  
       
        お尻をやけどして、山へ逃げていってしまいました。 
          屎朏熝著,瀉到山頂去了。  
       
        それからです、おサルのお尻が赤くなったのは。 
          自該以後猴仔屎朏變紅冬冬。  
       
      そして若返った心のやさしいおじいさんとおばあさんは、大きな屋敷でだれにも気がねしないで、末長く幸せに暮らしたという事です。  
      變後生个好心老阿公、老阿婆,戴在大座屋,無煩無勞過長長久久幸福生活。  
        
      おしまい 
      煞咧 
         
         
        
 
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