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10月12日の百物語

あかんべえおばけ

あかんべえお化け

 むかしむかし、気の強い貧乏侍が、町外れに化け物屋敷があると聞いて言いました。
「よし、おれが化け物を退治してやる!」
 そして荒れ放題の化け物屋敷に入り込んで、化け物が現れるのをじっと待ちました。

 夜がふけて、草木も眠るうし三つどき(→午前二時頃)。
 どこからともなく、おじいさんが現れました。
 どこから見ても普通のおじいさんで、ちっとも怖くありません。
「つまらん化け物だ。引っ込め!」
 侍がそう言うと、おじいさんが手を振って言いました。
「いいえ、わたしは化け物ではありません。
 わたしは元、この家のあるじでございます」
「この家の元あるじ? そのあるじが、何用だ?」
「はい。むかしわたしが商売をやっておりました頃は、店もはんじょうしておりましたが、あとを継いだせがれめが店をつぶして、今ではご覧のありまさ。
 なさけないかぎりです。
 そこであなたさまに、お願いがございます」
「ほう、何なりと、言うてみい」
「はい。向こうに、池がありましょう。
 あの池のわきの大きな石の下に、わたしがたくわえておいた小判が五万両ほど隠してございます」
「五万両! それは大金だな」
「願いと言うのは、ほかでもございません。その小判を元手に、この家をもう一度、もりたてていただきたいのです」
 おじいさんはそう言って、スーッと消えていきました。
「うむ、悪い話ではないな。五万両を手に入れて、この家の大旦那におさまるか」
 侍は夜が明けるのも待たずに、さっそく石の下を堀り始めました。
 どんどん掘っていくと、古めかしい箱が出てきました。
 その箱はずっしりと重く、一人では持ち上がらないほどです。
「よしよし、おれにも運がまわってきたぞ」
 侍は箱にかかっている古い鍵を壊すと、重いふたをゆっくりと開けました。
「それ、中から小判がざっくざく。・・・うぎゃー!」
 何と箱の中から大きなお化けが出てきて、まっ赤な舌をぺろりと出したのです。
「あかんべえー!」
 ふいをつかれて驚いた侍は気絶してしまい、朝になって目を覚ますと、町から遠く離れた原っぱの真ん中で裸になって寝ていたという事です。

おしまい

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