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 10月12日の小話 
 下からのぞいていた   むかしは、カガミは大変に高価な物でした。
 ある日の事、観音(かんのん)さまにお参りに行った息子が父親に言いました。
 「今日、観音さまに行った帰り、ふと下を見たら、何とカガミが落ちていたよ」
 「ほう、それでどうした? ちゃんとひろってきたか?」
 父親がたずねると、息子は首をふって言いました。
 「いいや、ひろわなかった」
 「このバカ息子! なぜにひろわないのだ?! そのカガミはきっと、観音さまがおさずけになった物だぞ。・・・ああっ、もったいない」
 「おいらも、取ろうとしたんだよ。カガミのそばにより、手を出したんだ。けれど、やめた」
 「なぜ?」
 「だって、カガミの中から人がのぞいていたもの。まぬけな顔だったけど、おっかなくて・・・」
 「まぬけ! それはカガミにうつったお前だ」
 ♪ちゃんちゃん(おしまい)
  
 
 
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