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8月15日の小話
えんがない
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投稿者 「フー」 ハーリ・クィン朗読館
あるところに、とてもあわて者の娘がいました。
この娘も年頃になり、いよいよお嫁に行く日が来ました。
娘をとても可愛がっていた母親は、お嫁に行く娘に言いました。
「お嫁に行っても、嫌な事をがまんすることはないよ。新しい家に、えん(→うんめい)があればいいけど、もしえんがなかったら、あきらめて帰っておいで」
「はい、えんがなかったら、無理をせずに帰ってきます」
娘がお婿さんの家へ行った次の日、娘は母親の言葉を思い出しました。
「お母さんが言っていたけど、この家にはえんがあるかしら? ないかしら?」
娘はお婿さんの家中を探してみましたが、この家にはえんがわがありません。
そこで娘は、お婿さんに、
「短い間でしたが、お世話になりました。この家には『えん』がありませんので、あきらめて帰ります」
と、言って、実家に帰って行ったということです。
♪ちゃんちゃん
(おしまい)
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