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 第 16話
 
  
 とけてしまった雪ん子
 青森県の民話 → 青森県情報
 
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  むかしむかし、ある雪国に、子どものいないおじいさんとおばあさんがいました。二人は、毎日のようにお宮まいりをして、
 「わしらにも、子どもをさずけてください」
 と、お願いしたのです。
 するとある日、二人の夢の中に神さまが現れて言いました。
 「そなたたちの願いを、聞き入れよう。女の子をさずけるから、雪で人形をつくるがよい」
 
 次の朝、おじいさんとおばあさんは大喜びで庭へ出ると、さっそく雪で人形をつくりました。
 頭はおかっぱ(→前髪を切り下げ、後髪をえり元で切りそろえた髪型)で、目がクリクリと大きなかわいい女の子の人形です。
 「よし、人形が出来た。こんなかわいい娘が、本当にいてくれたらなあ」
 「そうですね。雪人形でなく、これが本当の娘だったら」
 二人が雪人形をながめていると雪人形がスーッと消えて、そのかわりに雪人形そっくりのかわいい女の子が現れたのです。
 女の子は二人を見て、ニッコリとわらいました。
 「おおっ、本当の女の子だ。神さまが、願いをかなえてくれたんじゃ」
 「ありがたい、ありがたい」
 おじいさんとおばあさんは、女の子を家に連れて帰りました。
 見れば見るほどかわいい女の子で、おじいさんとおばあさんの事を、
 「お父さん、お母さん」
 と、よんでくれるのです。
 二人はこの女の子に雪ん子という名前をつけて、それはそれは大切に育てました。
 
 ところがどういうわけか雪ん子はあついのが大嫌いで、おじいさんやおばあさんがいろりにあたれと言っても、
 「寒いところがいいの。あついのはいや」
 と、言うのです。
 それにご飯もみそしるも、冷たくなってからでないと食べません。
 それでも雪ん子は、かぜ一つひかないので、二人はあきれるやら感心するやら。
 
 そんなある日、近所の子どもたちが雪ん子を遊びにさそいました。
 雪ん子は、遊びに行くのを嫌がりましたが、
 「雪ん子や、家にばかりいないで、たまにはみんなと遊んでおいで」
 と、おばあさんに言われて、しかたなく出かけました。
 
 さて、近所の子どもたちは雪ん子を、たき火のそばへ連れて行きました。
 あついのが大嫌いな雪ん子を、みんなでからかってやろうというのです。
 「雪ん子、火にあたれ」
 「そうだ。もっと火のそばへ行け」
 子どもたちは嫌がる雪ん子をつかんで、たき火のそばへ押しつけました。
 「いや! あついのはいや!」
 嫌がる雪ん子の体から、氷のように冷たい汗が流れました。
 そして雪ん子は、ジューッという音とともに消えてしまいました。
 「あっ、雪ん子がいなくなった」
 子どもたちはびっくりしてたき火を見つめましたが、小さくなったたき火の上に白い湯気(ゆげ)が立ちのぼっているだけです。
 かわいそうに雪から生まれた雪ん子は、火にとけてしまったのです。
 おしまい   
 
 
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