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9月10日の日本民話 2

段右衛門(だんえもん)のとんち

段右衛門(だんえもん)のとんち
鹿児島県の民話鹿児島県情報

 むかしむかし、徳留段右衛門(とくとめだんえもん)という、とんちの上手な侍がいました。

 ある日の事、用事で鹿児島の町まで出かけた段右衛門は、びんつけ屋の前を通りかかりました。
 びんつけとは、むかしの人が髪の毛の整えるのに使った油です。
 店にならんだ黄色のびんつけ油を見た段右衛門は、ちょっとしたいたずらを思いつきました。
「おい、びんつけ屋。
 この黄色い物は、なんともうまそうではないか。
 二、三升、売ってくれんか」
「えっ? 二、三升もですか?!」
「おや? 何かまずいのか?」
「いえいえ。そんなに買ってもらえるのなら、たんとおまけを差し上げますで」
 大量の注文に、すっかり気を良くした店の主人は笑顔で答えました。
 すると段右衛門は、店の主人に両手を出して言いました。
「それでは、そのおまけの分を先に食べてみるとするか。さあ、この手につけてくれんか」
「へいへい。どうぞ、たんと食べてください」
 店の主人は、段右衛門の両手にたっぷりとびんつけ油をつけてやりました。
「ほほーっ。なんともうまそうじゃ。いただきまー・・・」
 口を大きく開けた段右衛門は、急に思い出した様に言いました。
「おおっ、そう言えば残念な事に、武士は立食いを固く禁じられておるんじゃ。
 さて、どうしたものか。
 ・・・そうだ、宿屋に戻ってから食べれば問題ない」
 そう言って段右衛門は、さっさと行ってしまいました。

 それからしばらくして店の主人は、
「・・・ああっ! 代金代金!」
と、あわてて段右衛門を追いかけましたが、もう段右衛門の姿はどこにもありませんでした。

おしまい

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