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9月14日の世界の昔話

悪い王さま

悪い王さま
アンデルセン童話 → アンデルセンについて

 むかしむかし、ある国に、とても乱暴者の王さまがいました。
「世界中の国をやっつけて、世界をわしの物にするぞ」
 こうして王さまは、あちこちの国に戦争を仕掛けました。
 王さまが乱暴者なら兵隊たちも乱暴者で、攻め込んだ相手の国の畑を荒らしたり、お百姓の家に火をつけたりしました。
「助けてくれー!」
「あーん 、怖いよー」
 大人も子どもも、泣き騒ぎながら火の中を逃げまわります。
「はっはっはっ、もっと泣け、もっと叫べ。そしてわしにひざまづくのじゃ」
 王さまは負けた国の国王や国民から、お金や宝物を根こそぎ奪っていきました。
 王さまはそのお金で軍隊を大きくすると、さらに勢いを増して他の国を攻め滅ぼします。
「さあ、これで世界中の国がわしの物になったな。・・・よし、今度は神さまをやっつけてやろう」
 そう考えた王さまは、さっそく空を飛ぶ船を造らせました。
 それは何万羽ものワシに引っ張らせて、何千という大砲を一度に撃つ事が出来る船です。
 出来上がった船に、さっそく王さまは乗り込みました。
「どんどん上がれ、どんどん上がれ、今度の国は天国だ!」
 ワシたちは力強く羽ばたき、船を雲の上まで運びました。
 すると雲の上では、まっ白な羽根を背中につけた美しい女の人が、ふわふわと飛んでいました。
「あれは、天使か? よーし、撃ち殺してしまえ!」
 ダダダーン!
 ダダダーン!
 天使に向けて、鉄砲の玉が雨のように降り注ぎます。
 天使はあわてて逃げますが、そのうちの一発が天使の羽に命中しました。
「よーし、天使の羽を打ち抜いたぞ。追いかけて、捕まえるのだ!」
 王さまの命令で傷ついた天使を追いかけますが、天使のまっ白な羽からしたたり落ちた一滴の血が船の上に落ちると、血はまっ赤な炎になって燃え上がりました。
「わあ、火事だ! 早く火を消せ! 水を持ってくるのだ!」
 しかし天使の血の炎は水では消す事は出来ず、燃え上がった船は真っ逆さまに地面に落ちてしまいました。
 ズッドーン!
「ううう、苦しい。だが、わしは負けんぞ!」
 何とか助かった王さまは神さまを恐れるどころか、また空飛ぶ船を造らせました。
 しかも今度は前の船よりももっと大きくて、天使の血でも燃えないように鉄でおおわれています。
「よし、今度こそ、天国を滅ぼしてやるぞ!」
 そう言って王さまが船に乗り込んだ、その時、
 ブーン!
と、小さなハチの群れが、王さまに襲いかかったのです。
 王さまは、ハチを払いのけながら言いました。
「あいたた! だれか、じゅうたんを持ってこい! じゅうたんをわしの体に巻き付けて、ハチに刺されない様にするんだ!」
 ところがその時、一匹のハチがじゅうたんの中にもぐり込んでいたのです。
 ハチは王さまの耳の中に入ると、チクリチクリと刺しました。
「わあ、助けてくれー!」
 王さまはじゅうたんを投げ捨てると、ハチがもぐり込んだ服をビリビリと引き裂いて裸になって踊り出しました。
 その王さまの裸踊りを見た家来たちは、ゲラゲラと大笑いです。
「天国を攻めようとしたくせに、王さまたら、たった一匹の小さなハチに負けてしまったよ」
「ほんと、なさけない王さまだ」
 こうして部下の信用を失った王さまは、遠い国へと追放されたのです。

おしまい

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