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        福娘童話集 > お正月のお話し >天福地福 
         
      お正月の昔話 第 6 話 
       
      天福地福(てんぷくちふく) 
        
       
天福地福 
新潟県の民話 → 新潟県情報 
      
      
       むかしむかし、あるところに、正直なおじいさんと欲張りなおじいさんとが隣同士で住んでいました。 
 ある年の暮れの事、偶然に町で出会った二人は、 
「正月の二日の夜は、お互いに良い夢を見たいものだな」 
「うん、福を授かる良い夢をな」 
と、話し合いました。 
 そしてお互いに見た夢がどんな夢だったかを、教え合う事にしたのです。 
 
 さて、正月三日の朝、二人は庭のかきねで顔を合わせました。 
 正月の挨拶もそこそこに、欲張りなおじいさんが尋ねました。 
「どうだったね、良い夢を見たかね?」 
「見た見た、おらの夢は、天から福を授かった夢じゃ」 
 正直なおじいさんが、そう答えると、 
「そうか、おらの夢は、地から福を授かった夢じゃ」 
と、欲張りなおじいさんも教えました。 
「天から福と、地から福か。どちらも良い夢だな」 
「そうだ、今年は楽しみだ」 
 
 そして正月が過ぎて、いく日かたったある日の事。 
「今日はずいぶんと良い天気じゃ。豆でもまいてみようか」 
 正直なおじいさんが裏の畑に出て耕していると、くわの先がガチンと何かがぶつかりました。 
「はて? こんな所に石などあるはずがないのだが」 
 そう思いながらもくわの先を掘ってみると、下には大きなかめが埋まっていました。 
 正直なおじいさんがかめのふたを取って見ると、中には大判小判がぎっしり入っていて、眩しいくらいに光っています。 
「これはたまげた。この宝は、隣のじいさまが夢に見た地福に違いない。何といっても、地から授かった宝だからな。早く行って、知らせてやらにゃあ」 
 正直なおじいさんは、さっそく隣のおじいさんに知らせに行きました。 
「ほれ、お前さんの夢に見た地福が、おらの畑から出たぞ。大判小判がたっぷり入ったかめじゃ。早く行って取ってくりゃいい」 
 正直なじいさまは、かめが出た場所を教えてやりました。 
 そして家に帰ると、その事をおばあさんに話してやりました。 
「ばあさま、おらの畑から地福が出てな、隣のじいさまに知らせてやったら、えらく喜んでおったぞ。すぐに大判小判の入ったかめを、取って来るじゃろう」 
 すると、おばあさんは、 
「それは、良い事をなさった」 
と、欲のないおじいさんを褒めてあげました。 
 
 さて、隣の欲張りなおじいさんは、大急ぎでかめの出た畑へ飛んで行きました。 
 かめは教えられた所に、ちゃんとありました。 
「今年は何て良い年なんじゃ! そうれ、♪大判小判が、♪ザックザク」 
 欲張りなおじいさんは鼻歌を歌いながら、かめのふたを取ってみてビックリ。 
 かめの中には大判小判どころか、気味の悪いヘビが何匹も入っていて、ニョロニョロとはい回っているではありませんか。 
「あの、くそったれじじいめが、よくもおらを騙しやがったな! 何が、大判小判たっぷりだ! くそっ!」 
 欲張りなおじいさんは、顔をまっ赤にして怒りました。 
 そして、 
「今度はおらが、あのじじいめをおどかしてやらにゃあ」 
と、言って、ふたをしっかりすると、かめを背負って帰りました。 
 家に着くと欲張りなおじいさんは長いはしごを持ち出して、隣の家の屋根に登りました。 
 そして屋根の上に突き出ている、けむ出しの窓から中をのぞいてみると、おじいさんとおばあさんはいろりに火を赤々と燃やして、何やら楽しそうに話し合っていました。 
「人を騙しておいて、いい気なもんだ」 
 欲張りなおじいさんは、ますます腹を立てました。 
「さあ、これでもくらえ!」 
 欲張りなおじいさんは持って来たかめのふたを取ると、ガバッと中の物をおじいさんたちの頭めがけて落としました。 
 ところが不思議な事に、かめの中から出た物はヘビなんかではなく、本当の大判小判だったのです。 
「ありゃあ、大判小判が天井から降って来たぞ。おかしな事もあるもんだ。いや、これこそ、おらが夢に見た天福だ。ばあさま、天福がさずかったんだ!」 
「ほんとになあ」 
 二人は大喜びです。 
 
 こうして正直なおじいさんとおばあさんは大変なお金持ちになって、いつまでも楽しく暮らしたという事です。 
      おしまい 
         
         
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