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        福娘童話集 >母の日・父の日特集 > ヒヨコ星 
         
      母の日・父の日 特集 第 2 話 
       
        
       
ヒヨコ星 
タイの昔話 → タイの国情報 
      
       
      
      
       むかしむかし、ある町はずれの畑の中に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 
 二人の家は小さくて、持ち物は一羽のメンドリだけでした。 
 しばらくして、メンドリは六つのタマゴを生みました。 
 六つのタマゴは、六羽の可愛いヒヨコになりました。 
「さあ、お母さんのあとについておいで」 
 メンドリは大喜びで、ヒヨコたちの世話をしました。 
 タカやトビなど、怖い鳥たちにさらわれない様に気をつけて、大事に大事に育てました。 
 
 ところが、ある晩の事です。 
 メンドリがヒヨコたちを寝かしつけていますと、こんな話し声が聞こえてきました。 
「ばあさんや、明日から村でお祭りがあるそうじゃ。わしらもお祭りに行きたいが、神さまヘのお供え物をどうしよう?」 
「本当にどうしましょう? わたしらは貧乏で、物を買うお金もありません。でも、お祭りに何も神さまにお供えしなかったら、ほかの人たちに、けちん坊と思われるでしょうね」 
 おじいさんとおばあさんは、お祭りのお供え物の相談をしていたのです。 
 そしてとうとう、おじいさんが言いました。 
「どうだろう。一羽しかいないが、あのメンドリをお供えしたら」 
 おばあさんは、悲しそうにうなずきました。 
「そうですね。ヒヨコたちが可愛そうですけど、それしかないですね」 
 
 二人の話を、メンドリはみんな聞いていました。 
 明日は、小さな子どもたちを残して死ななければなりません。 
 メンドリは、ヒヨコたちに言いました。 
「可愛い子どもたち、明日、お母さんは死ななければならないの。 
 お願いよ、お母さんがいなくなっても、お前たちはけんかせずに、仲良く暮らしなさいね。 
 食べ物を見つけたら、いつでも一緒に食べてね。 
 決して、離ればなれにならないでね。 
 それから、家の外に出たりしちゃだめよ。 
 怖いイヌがいるからね」 
「いやだよ! お母さん。どうして死ななくちゃならないの?」 
 ヒヨコたちが、泣き出しました。 
 お母さんも、泣き出したいのをがまんして、 
「おじいさんとおばあさんが、わたしの肉を神さまにお供えすると話していたの。 
 死ぬ事は怖くないけれど、小さなお前たちを残して行くのが心配で。 
 それからそうだわ、どんなに遊びたくなっても、空き地へは出て行かないと約束して。 
 タカやトビに狙われるからね。 
 それから・・・」 
と、ひと晩中、ヒヨコたちに色々な事を言い聞かせました。 
 
 次の日、おじいさんは朝早く起きると、すぐにメンドリを殺しました。 
 それから羽をむしる為に、グラグラ煮えたお湯の中にメンドリを投げ込みました。 
 それを見ていたヒヨコたちは、もうジッとがまんしている事が出来ません。 
「お母さん、今すぐ、ぼくたちも行くからね!」 
「天国に行っても、一緒にいようね!」 
 ヒヨコたちは小さな羽をはばたかせると、次々と、お湯の中へ飛び込んでいきました。 
 
 この可愛そう鳥たちの様子を、天の神さまが見ていました。 
「何という、美しい母と子の心だろう。 
 お前たちがいつまでも一緒にいられるよう、星に生まれかわらせてやろう」 
 こうして、お母さんと六羽のヒヨコたちは、夜空にきらめく七つの星になりました。 
      おしまい 
         
         
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