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        福娘童話集 >母の日・父の日特集 >鬼子母神さま 
         
      母の日・父の日 特集 第 3 話 
       
        
       
鬼子母神さま 
埼玉県の民話 → 埼玉県情報 
      
       むかしむかし、狭山(さやま→埼玉県南部)に、ある村がありました。 
 ある日の事、子どもたちが遊んでいると、とつぜん大きなつむじ風がふきおこったのです。 
「子どもはどこだ! 子どもはどこだ!」 
 村に子どもをさらう、鬼女(おにおんな)が現れたのです。 
「鬼女だ!」 
 風の中から現れた鬼女は、子どもを一人さらっていきました。 
 それからは夕方になると毎日のように鬼女が山からやってきて、子どもをさらっていくのです。 
「子どもはどこだ! かくれても、においでわかるぞ! くんくん。そこだなー!」 
 子どもをどこにかくしても、鬼女は鼻がいいので、においで見つけられてしまいます。 
 子どもたちの声でにぎわっていた村は、ひっそりとさびしい村になってしまいました。 
 村の人たちは、何かいい方法はないかと相談して、お釈迦(しゃか)さまにお願いすることにしました。 
 次の日、村人たちは、お釈迦さまのいるという山にのぼっていきました。 
 やがて雲のあいだから姿を現したお釈迦さまに、村人たちは手をあわせてお願いしました。 
「村に鬼女がやってきて、子どもをさらっていくのです。どうかお助けくださいませ」 
 すると、お釈迦さまはいいました。 
「わかりました。わたしが何とかしますから、どうぞ安心なさい」 
 お釈迦さまがさっそく鬼女のところへいってみると、鬼女にさらわれてきた子どもたちが穴ぐらの中で泣いていました。 
 このひどい鬼女ですが、この鬼女にも自分の子どもがいるのです。 
 それも一人や二人ではなく、なんと一万人もです。 
 その子どもたちを、鬼女は、 
「おお、わたしの子はなんてかわいいんじゃろう」 
と、だきしめるのです。 
 それを知ったお釈迦さまは、鬼女が出かけたすきに鬼女の子どもを一人つれて帰ったのです。 
 さあ、自分の子どもが一人たりないことに気がついた鬼女は、 
「わたしの子どもが一人いなくなった! どこへいったの?」 
と、くるったようにわが子をさがしまわります。 
 そこへ、お釈迦さまが姿を現しました。 
「ああ、お釈迦さま。ちょうどよいところに。実はわたしのかわいい子どもが、一人いないのです」 
 するとお釈迦さまは、しずかにいいました。 
「それはかわいそうに。・・・ところで鬼女よ。お前は一万人も子どもがいるが、一人でもいなくなるとそんなに悲しいのか?」 
「はい、それはもちろんでございます」 
「そうであろう。親とはそういうものだ。しかしそれなら、お前に子どもをさらわれた人間たちの気持ちも、わかるのではないか?」 
「・・・あっ!」 
「そうだ。子どもがいなくなったお前同様、人間たちも子どもがいなくなって悲しんでいるのだ。すぐに子どもたちを帰してやりなさい」 
 お釈迦さまはそういうと、鬼女の子どもを返してやりました。 
「お許しください! わたしがわるうございました!」 
 すっかり心を入れかえた鬼女は、子どもたちを村へ帰したのです。 
 それから鬼女はお釈迦さまの弟子となり、鬼子母神(きしぼじん)となって、安産と子どもを病気からまもる神さまになったという事です。 
      おしまい 
         
         
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